泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第3話>
<第3話>
「なんでうちの店、知ったの?」
「あの、最初はその、渋谷でナンパ待ち、してて」
「はっナンパ待ち? 君が?」
「いや、その、ヒショカツで」
「ヒショカツ??」
「ええ、いや、だからそう、ナンパ待ちしてたら、スカウトの人に声かけられて。その時はびっくりして思わず逃げちゃったんだけど、後で思い直して、やっぱりこういうところで働いてみようかなって……それでインターネットで検索したんです。ソープ、求人、って」
朝倉さんの幅の広い二重の目がいっそう怪訝な色になるので、最後のほうは泣きそうな声になってしまった。
親のすねかじり大学生、社会人経験ゼロのひよっ子なわたしは、そもそも面接自体に慣れてない。
来年は就活。こんなことで大丈夫なんだろうか。
「オッケー、わかった。じゃ、うちのシステムの説明、するね」
絶対に怪しまれてるのに、それ以上は追及されない。
朝倉さんの筋張った手がテーブルの上のクリアファイルからA4サイズのプリントを1枚取り出し、わたしに押しやる。手書きの文字がちょうどいい間隔を取って並んでいた。<給料><罰金><ルール>などの項目がある。
「まずバック、いやバックなんて言ってもわかんないのか、要は給料だよ。風俗は歩合制が基本で、時給じゃなくて、接客1本あたりに対してお給料が発生して、店ごとに違うのね。で、うちではこの値段ってわけ。ソープランドには高級店、大衆店、激安店とグレードがあって、うちは真ん中クラスの大衆店。でも、ここ吉原の大衆店でこの額っていうのは正直安いほうなんだけどね」
「これで安いほうなんですか!?」
70分13000円、90分15500円、120分18000円……。
広告費とかお茶代とかの雑費を引いてこの額って書いてある。ということは、時給換算したら……? 夏休みまでバイトしてたファミレスなんて時給850円だったのに……。
「安いよ。高級店なんて行ったら、この倍ぐらいもらえる」
「倍……」
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