泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第4話>
<第4話>
「ただ、今はほら、こういう時代だから。高級店はどこも厳しいんだよね、どうしても遊ぶ層が限られてくるし。うちは1本のバックは安くても、吉原で20年以上やってる老舗グループで、宣伝力もあって、全国各地からお客さんが集まってくるんだ。単価が安くても本数があるから稼げるってわけ。曜日や時間にもよるけれど、1日いればみんなだいたい、4、5万は稼いでいくね」
「4、5万……」
週4で1日6時間ファミレスでバイトして、1カ月のトータルがやっと8万ちょっとだった。もしソープランドで働いたら2日でその金額が手に入ることになる。
わたし、ものすごくヤバい世界に足を踏み入れようとしているのかもしれない。ううん、かもしれない、じゃないんだ。
「ただ、稼げる代わりにサービスはハードだよ。うちは即尺即アナル、ノースキンが基本だから」
突然業界用語が飛び出して目が点になる。
ていうか、アナルって普通に言っちゃってるし、この人。わたし、未だかつてそんな単語口にしたことないのに。いやここはそういう場所なんだけれど……。
「いきなりそんなこと言われても、だよね。まず即尺即アナルっていうのは、部屋入ってお風呂に入らないで、いきなりお客さんのあそこやアナルを舐めるプレイ。やっぱり、抵抗ある?」
「抵抗というか……。そもそも想像がつきません」
ここで初めて朝倉さんが笑った。
なんだこのド素人が、っていう見下した笑い方じゃなくて、動物とか子どもとか、微笑ましいものを目にした時のような笑顔だった。
壁の向こうでボーイさんが『お上がりなさいませ!』と声を張っている。
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