泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第12話>
<第12話>
休憩を挟んでその次は泡洗いの練習。洗面器にたっぷりのボディソープとお湯を入れるとメレンゲのようにきめ細かな泡が立つ。
「ここでローションを少しだけ入れておくのがポイントなの。泡の持ちが良くなるから」
感心しながら見ていると、お客さん役になったわたしの体に沙和さんの手が伸びる。
背筋がぞわぞわしそうなソフトタッチ、さらにマシュマロみたいな胸を押し付けられて目まいがしそう。
自分の体で体感して手順を頭に叩き込んだら、沙和さんの体で練習だ。沙和さんは、どこに触れてもとろけるように柔らかくて、近づけばバラとたくさんのフルーツと甘いお菓子を混ぜたような匂いがするから、心臓が駆け足になった。
これも横から見ている朝倉さんにたっぷりとダメ出しをくらい、ようやくOKをもらったら、いよいよマットプレイに入る。
立てかけてあったマットを寝かせ、適度なゆるさにしたローションを表面全体に敷き詰めてぬるぬるにする。うつ伏せになった朝倉さんの体に胸をこすりつけ、全身ローションまみれになって8の字を描いたり、朝倉さんの肌にチュッチュと音を立てて口づけたりする沙和さんの動きは、まるでマットと一体化しているようで、実になめらか。風俗店のプレイっていうより、ショーを見ているみたいだ。
「見ていればわかると思うけれど、これ、かなり筋肉が必要なのよ」
そう言う沙和さんの腕や足は一見すごく柔らかそうなのに、よく見るとたしかにみっしりと質の良さそうな筋肉が詰まっている。
「わたし、筋肉、ないです」
「じゃあ鍛えとくんだ」
朝倉さんに言い放たれ、はい、と答えるしかない。
風俗だって、ソープ嬢だって、イメージしていたほど簡単な仕事じゃないってわたしにもわかってきた。面接の最後で朝倉さんに言われたプロ、という言葉が耳奥でリフレインされる。
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