Yumika〜風俗嬢の恋 vol.2〜<第2話>
<第2話>
むなしい気持ちでスクロールさせていくと、ある一件のメールで手が止まる。
受信日時は昨日のお昼。
『今日はホンットありがとう、めっちゃよかった♪ 統哉くんマジスゴすぎっ!!(笑) びっくりしちゃったよー。またお店行くね(^0^)/』
……めっちゃよかったって何が? マジスゴすぎって何が?
付き合い始める時、統哉はあたしに枕営業はしないと約束してくれた。もちろんホストなんだからそんな約束無意味も同然、分かってるけど、だけど。
ふーう、と何かの動物のうなり声のようなものを漏らしながら、壁を向いて寝ていた統哉が寝返りを打つ。慌てて携帯を枕元に戻す。
反射的にフリップを閉じちゃったけど、開けっぱなしのほうがよかっただろうか? 統哉のことだから、携帯を開けっぱなしで寝たことなんか覚えちゃいないかな?
切れ長の睫毛の長い目が眠そうに開き、あたしを見上げる。苦笑いが唇を歪めた。
どうか気づかれてませんように。
「裕未香、もう行くの?」
「うん。今日十二時からだから」
「そっかぁ」
統哉に手首を掴まれ、あたしは引きずられるようにベッドに倒れこむ。首の後ろに華奢な手を回され、酒の味のキスをされる。あーあ、せっかく塗ったばっかりのグロスが落ちちゃう、勿体無い。
「ダメだよ、行かなきゃ」
「わかってるー、ちょっとだけ」
統哉の手が胸に伸び、ブラジャーの上から揉みしだかれる。大して大きくない、どっちかっていうと小さいほうなのに、統哉はおっぱいを揉むのが好きだ。あたしの胸は形がとてもいいらしい。誰と、何人と比べてそう言ってるのか知らないけど。
「遅刻しちゃう。もう行くね」
ぶー、と口を尖らせる統哉を優しくなだめ、ベッドに押し戻す。玄関のドアを閉めながら振り返ると、統哉はベッドから目だけちょこんと出して、シーツの中から「いってら」と言った。小さく手を振って、ドアを閉める。ヒールを打ち鳴らしてマンションの廊下を歩きながら、ようやく何も気づかれなかったことにホッとする。
いや、統哉が携帯を見られてることに気づくわけなんかないんだ。浮気がバレても別にいい、あたしなら絶対許してくれるって、よく知ってるんだから、あいつは。
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