泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第18話>
<第18話>
竜希さんは高校を卒業した後、看護学校に進んで、看護師になった。まだ珍しい男のナース。お母さん情報によれば、由実さんもナースだそうで、典型的な職場恋愛の果ての職場結婚。
竜希さんが看護師になるって言い出した時から、悪い予感はしてたんだ。女の人の多い職場だから。
案の定、だった。
何が悪い予感、だ。我ながら馬鹿みたい。
周りに女の人がいようがいまいが関係ない、わたしが気づいてなかっただけで、今までも竜希さんに彼女はいたんだろうし、それもきっとみんな、由実さんみたいな大人で素敵な人だったんだろうし…。
わたしなんてハナから相手にされてなかったんだ。
竜希さんは由実さんを駅のロータリーまで送っていった。由実さんの家はこの駅から出てるバスに乗って15分のところらしい。よりによって竜希さんの運命の相手が、こんな近いところにいなくてもいいのに。
今よりずっと後、わたしが大学を卒業して、家を出て、たまに実家に帰ったら竜希さんが結婚していた、子どももいた。そういうシチュエーションのほうがずっと楽だったはずだ。
それでも当然、苦しみはしただろうけれど。
バスが来るまで3人で立ち話をした。
由実さんは、自分が知らない子どもの頃の竜希さんについてあれこれ聞いてきて、わたしは答える度に、『そんなことしてねーし!』『かずちゃん、過去を捏造するな!』と顔を赤くした竜希さんに突っ込まれた(何も捏造なんてしてないのに)。
竜希さんのほうはというと、由実さんがバスに乗り込むその瞬間まで、暑くないかだのバスに乗ったらすぐ優先席に座れだの、わたしの存在そっちのけで由実さんの心配ばかりで、わたしと由実さんは何度か顔を見合わせて苦笑した。
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