泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第25話>
<第25話>
2日目の研修は、1日目に教わったことの復習で、まずは朝倉さんを台にして最初の脱衣から泡洗い、マットプレイまでを通して行う。
傍で見ている沙和さんも台になっている朝倉さんも無言で、沈黙というプレッシャーに押しつぶされそうだったけれど、家で復習しておいたのでどうにか合格点をもらえた。
「悪くはない」という朝倉さんのクールな一言に涙が出そうになった。
もちろんその後、きっちりダメ出しを食らったけど…。
その後に、沙和さんから泡洗いやマットプレイの細かいテクニックを教わって、最後は沙和さんの腰についたペニバンで即尺の練習。体が小さいわたしは口も小さいらしくて、正直これが一番しんどい。ようやく終わった頃には腕も脚も口の中もくたくただ。
「知依ちゃん、大丈夫? 疲れちゃった?」
マットをごしごしやりながら沙和さんが言う。
最後に習うのは部屋の片付けで、朝倉さんは別室にシャワーを浴びに行ったから個室には沙和さんと2人きりだ。
朝倉さんがいないと張りつめていた部屋の空気が一気に緩まるし、「先生」の顔からおっとり優しい清楚なお姉さんの顔に戻った沙和さんのお蔭で、たちまち体と頭の疲れがほぐれていく。
「大丈夫です、このぐらい」
「この後働いていくんでしょう? わからないことがあったら今のうちに聞いといたほうがいいわよ。ちょうど朝倉さんもいないし、なんでも言っていいからね」
なんでも、というのは具体的にどんなことを差しているんだろう。意味深な一言だった。
「あと、こっちから教え忘れていることは……。そうそう、知依ちゃん、保健所の抜き打ち検査のことは朝倉さんから聞いた?」
「聞いてないです。なんですか、それ」
「年に数回、保健所の人が抜き打ち検査にやってくるの。ひとつの店に検査が入ると、吉原にあるすべてのお店に連絡が行くのね、抜き打ち検査やってるよー、って。保健所がうちの店に入りましたって合図は、これ」
と、明かりを調整するリモコンを取り出し、個室を一瞬真っ暗にして、すぐ点けた。『ローズガーデン』の個室の明かりはムードを演出するため、やや暗めに標準設定してある。
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