泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第7話>
<第7話>
心にモヤモヤを抱えてたって、すぐ切り替えられるのがわたしのいいところ。
だって、この後颯太くんに会えるんだもの。
颯太くんの胸に飛び込めることを思えば、歩く足取りも軽い。秋が深まって頬を突く夜風は冷たいけれど、へっちゃらだ。
2人の愛の巣があるマンションは1階に24時間営業のスーパーがあって、とっても便利。今にもスキップしだしそうな足をなだめなから店内に入り、食料品をぽんぽんカゴに入れていく。
今夜は颯太くんの好きなカレーライスにしよう。あと、ポテトサラダも。じゃがいもがカレーとかぶってるけど、これも颯太くんの好物だから。それだけじゃ緑黄色野菜がないから、トマトをサラダにして……。
ママと2人暮らしの時は全然料理なんてしなかったけれど、颯太くんと住むようになってから、ちっちゃな子がやわらかい頭でなんでも覚えていくように、あっという間に料理に慣れた。
最初は水を入れないで炊飯器のスイッチを押したり、じゃがいもの皮を剥いただけで10本の指すべてにばんそうこうを貼るはめになったりで颯太くんをドン引きさせたけど、今では若干ハタチにして、立派な主婦。
「ただいまー」
玄関で元気よく言ってみたところで返ってくる声はない。
颯太くんは夜働いてるから、帰ってくるのはいつも、朝。わたしがただいまを言ったのは本物の颯太くんじゃなくて、クツ箱の上に飾ってある颯太くんとのツーショット写真だ。
颯太くんが恥ずかしがって、「やめて」と言ったのを半ば強引に、フランフランで買ったフォトフレームに入れて飾っている。
写真は去年、2人でディズニーランドに行った時のもの。ミッキーの耳をつけている写真の中の颯太くんに、チュッとする。
ただいま。
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