泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第10話>

2014-12-31 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,006 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Urara 泡のように消えていく… 連載小説


 

ポリネシアンセックス

 

<第10話>

 

「んー、うまい! お前の作るカレーはいつも最高だよ」

 

「サラダはどう? ポテトサラダと、あと緑黄色野菜が足りないなと思って、トマトのサラダも作ってみたの」

 

「どっちもすげーうまい。栄養のことまでちゃんと考えてるなんて、すごいな」

 

「だって颯太くんに健康で長生きしてほしいんだもん」

 

颯太くんは何を作ってもおいしい、おいしいって連発してくれるし、いつだって優しい。雨音さんが言うように、貢ぐ女と貢がれる男なんかじゃないんだ。

 

貢ぐ愛は一方通行だけど、わたしたちの愛はちゃんとやり取りされている。わたしが颯太くんに尽くすのと同じくらい、颯太くんもわたしを癒してくれる。

 

遅い夕食……というか、むしろ朝食が終わると、お財布を取りに行く。

 

これは毎日の恒例行事。

 

わたしがどれだけ颯太くんに尽くしたか、颯太くんのために頑張ったかを伝える、大切な時間だ。

 

「はい。これ、今日の分」

 

「ありがとう。頑張ったな」

 

指の長い、白くて華奢な手がよくやったねと頭を撫でてくれる。

 

高いアクセサリーもブランドバッグも服もいらない。颯太くんに褒めてもらうことが、何よりの喜びだ。

 

女の子が風俗で働く理由にはいろいろあるけれど、わたしはお金のためじゃなくて愛のために働いている。借金とかのせいで仕方なく働いてる子よりずっと、幸せな風俗嬢だと思う。

 

「どうだった? 今日は」

 

「大丈夫だよ、特にトラブルもなかったし。でも一番最後についたお客さんには、参ったな。すっごーく太ってるんだもん、ぶっくぶく。ほんと、お相撲さんみたいだったー」

 

「ほんとにお相撲さんだったりして」

 

「あはは、まっさかー。でも、のしかかられてちょっと、苦しかったよー」

 

「マジ、風俗で働いてる人って偉いよな。そんなキモいのまで、笑顔で相手しなきゃいけないんだから」

 

「うん。でもね、わたしは全然大丈夫。いやいや仕事してるわけじゃないし、何も我慢してない。颯太くんのためだって思えば、なんだってへっちゃらだよ」

 

 

 




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