泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第10話>
<第10話>
「んー、うまい! お前の作るカレーはいつも最高だよ」
「サラダはどう? ポテトサラダと、あと緑黄色野菜が足りないなと思って、トマトのサラダも作ってみたの」
「どっちもすげーうまい。栄養のことまでちゃんと考えてるなんて、すごいな」
「だって颯太くんに健康で長生きしてほしいんだもん」
颯太くんは何を作ってもおいしい、おいしいって連発してくれるし、いつだって優しい。雨音さんが言うように、貢ぐ女と貢がれる男なんかじゃないんだ。
貢ぐ愛は一方通行だけど、わたしたちの愛はちゃんとやり取りされている。わたしが颯太くんに尽くすのと同じくらい、颯太くんもわたしを癒してくれる。
遅い夕食……というか、むしろ朝食が終わると、お財布を取りに行く。
これは毎日の恒例行事。
わたしがどれだけ颯太くんに尽くしたか、颯太くんのために頑張ったかを伝える、大切な時間だ。
「はい。これ、今日の分」
「ありがとう。頑張ったな」
指の長い、白くて華奢な手がよくやったねと頭を撫でてくれる。
高いアクセサリーもブランドバッグも服もいらない。颯太くんに褒めてもらうことが、何よりの喜びだ。
女の子が風俗で働く理由にはいろいろあるけれど、わたしはお金のためじゃなくて愛のために働いている。借金とかのせいで仕方なく働いてる子よりずっと、幸せな風俗嬢だと思う。
「どうだった? 今日は」
「大丈夫だよ、特にトラブルもなかったし。でも一番最後についたお客さんには、参ったな。すっごーく太ってるんだもん、ぶっくぶく。ほんと、お相撲さんみたいだったー」
「ほんとにお相撲さんだったりして」
「あはは、まっさかー。でも、のしかかられてちょっと、苦しかったよー」
「マジ、風俗で働いてる人って偉いよな。そんなキモいのまで、笑顔で相手しなきゃいけないんだから」
「うん。でもね、わたしは全然大丈夫。いやいや仕事してるわけじゃないし、何も我慢してない。颯太くんのためだって思えば、なんだってへっちゃらだよ」
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。