泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第12話>
<第12話>
ぶんぶんぶんぶん、180度回転しそうな勢いで首を振った。
「違うんだよ。颯太くんが自分を責める必要、ないんだよ。全部わたしが好きでしていることなんだもん。いくらキモいおっさんに触られたって舐められたって、その人を颯太くんだと思えば平気。颯太くんのためだと思えば平気。わたしは颯太くんに尽くすことができて、本当に幸せなんだよ」
颯太くんが俯きかけていた顔を上げる。ついにこぼれた涙が長い睫毛を潤して、頬のしずくが朝つゆみたいに光っている。
「ほんと、お前は最高の彼女だよ。毎日毎日うまいもん作ってくれるし、俺が仕事で他の女と会ってても怒らないし。心が優しくて広くて、強いんだよな」
「颯太くんがいるから、優しくて広くて強い人になれるんだよ」
「いつもありがとう。これからも俺の傍にいてくれよ」
そう言って椅子からお尻を浮かせ、中腰のままテーブルを挟んでわたしにキスをする。カレーの匂いがほんのり香るキスのおかげで、確信する。
この人を選んで、本当に良かった。
いつのまにか2人、ベッドの中で抱き合っている。
颯太くんとのセックスは消毒みたいなものだ。
一日じゅう、名前すら憶えていない男の人たちにさんざん触られ舐められ、かき回された体を、颯太くんの指が、唇が、思いきり固く膨らんだところが、丁寧に癒してくれる。
風俗で働くことは辛くないけれど、好きでもない人とセックスするのはいけないことなんだとは思う。その時は目の前のお客さんを颯太くんに重ね、気持ちも体も盛り上げることができたって、一日の終わりにはいつも体の中心にひゅんと冷たい隙間風が吹くんだ。
わたしは、毎日汚されている。よくお客さんから褒められるたっぷり水分を含んだ若い肌の上に、どんどん汚れが積もっていく。
そのこと自体はどうしようもない。けれど颯太くんに消毒してもらえば、明日もまた頑張ろうと思える。
「大好き……。ううん、愛してる」
颯太くんが大きく動きながら耳もとで囁く。全身で感じる颯太くんの体温が愛おしくて、毎日隙間風に晒されているところが甘く温かいもので満たされていく。
「わたしも、愛してるよ」
華奢な背中にしっかり腕を回して、颯太くんの愛に応える。大好きな人とのセックスはいつも失神しそうなほど気持ちいい。毎回が、今までで一番だ。
颯太くんが腰を振りながら右手でわたしの敏感なところをこね回す。びりびり、電流に貫かれるような激しい刺激に真っ二つにされ、もう何回目かもわからない絶頂に突きあげられる。
まもなく颯太くんも果てて、わたしの最深部に向かって一滴残らず注ぎ込んだ。
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