泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第16話>

2015-01-06 20:00 配信 / 閲覧回数 : 845 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Urara 泡のように消えていく… 連載小説


 

JESSIE

 

<第16話>

 

仕事のこと、恋愛のこと。まるで女友だちとするような会話がぽんぽん弾んで、あっという間に時間は過ぎていった。この後わたしは吉原のローズガーデンに、ママは堀之内に出勤。

 

ファミレスを出て、駅のロータリーでお別れ。

 

「じゃあ、社長さんと上手くいったら報告して!」

 

「もちろん。上手くいったら、あんたにもお父さんができるんだね」

 

「いいなー。お父さんかぁ」

 

わたしが知る限り、ママは3回結婚して3回離婚してる。つまりこれまで3人のお父さんがいたんだけれど、未だに「お父さん」という響きは少しくすぐったい。

 

中学生の頃、本当のお父さんがどんな人だったのかって聞いた時は、「ぶっちゃけー、わかんないんだよねぇ。客か、そん時付き合ってた人たちの中のどれかに決まってるんだけどさー」なんて答えが返ってきて、少なからずがっかりしてしまった。

 

この先本当のお父さんに会いたくなっても、どこへ行ったらいいのかもわからないんだから。

 

でも、お父さんはきっとこれから、できるんだ。

 

ママはまだ30代。今から幸せになれる可能性は十分にある。

 

わたしが渡すお金でその幸せを手助けできるなら、喜んで出す。ママの幸せのためのお金なら、惜しまない。

 

颯太くんのためだったり、ママのためだったり。

 

いつも自分のためじゃなくて、誰かのために生きて、誰かのためにお金を使いたいと思う。誰かに良いことができて初めて、自分の存在が認められたような、自分が生きている証が掴める気がする。

 

 




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