泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第17話>

2015-01-07 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,023 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Urara 泡のように消えていく… 連載小説


 

JESSIE

 

<第17話>

 

その人を見た瞬間、体の中身がぐるんとひっくり返るような衝撃が走った。

 

たれ目がちな二重の目、何も塗ってないのになぜか赤みの強い唇、一見普通だけどよく見るとボタンの形が変わってたり、こだわりが感じられるファッションに、女の子に本能的な警戒心を起こさせるスケベな笑い方……。

 

最初は本人だと思った。まさかそんなはずってすぐ打ち消したけど。

 

だってあれから10年も経っている。わたしが痩せっぽちな子どもから、胸もお尻も膨らんだハタチの大人になったように、あの人だって10年前とそっくり同じ姿のわけがない。ちっとも老けてないんだもの、別人だ。

 

名前だってほら、田端って、あの人とは全然違う。いや、こういうところで本名を名乗る人のほうが少ないんだから、名前なんてアテにできないんだけど。

 

「君、ほーんとかわいいね。えっまだハタチなの? 若っ」

 

わたしを見るなり田端さんはハイテンションでまくしたて、早速お尻を触ってきた。

 

条件反射でのけぞってしまう。毎日毎日いろんな人に体じゅう触られ舐められる生活で、ワンピースごしにお尻を撫でられるぐらいなんでもないはずなのに、田端さんの手が当たったその部分に、大量の虫がじわっと生まれるような嫌悪感が走った。

 

「しまった」と思ったけれど、斜め上からわたしを見下ろす田端さんは、一瞬目を見開いただけで、さらに目尻の皴を深くして笑う。

 

「わー、純情だねぇ。何なに? もしかしてまだ慣れてないのー?」

 

「はい、まだまだ新人なんですよ~ぉ。よろしくお願いしまぁす!」

 

もう一年もこの店にいるくせに何が新人だ、しらじらしい。でもうまくごまかせた。

 

田端さんと手を取り合い、お店の狭い階段を上がる。

 

70分のコースなので、個室に入ってすぐベッドに入るか、それともマットプレイをするかを選んでもらった。

 

迷わずベッドをチョイスする田端さん。わたしは70分のショートコースが多いので、ベッドかマットかどちらかひとつしかできない。だから、お客さんに選んでもらわないといけない。

 

ほとんどのお客さんがベッド、と言う。マットもたまにはやるけれど、わたしのマットプレイは完全に自己流。研修で教わったことはほとんど忘れてしまった。

 

 




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