Yumika〜風俗嬢の恋 vol.2〜<第4話>
<第4話>
三本目が終わって、初めて休むことが出来た。休憩室にはあたしともう一人、やよいがいた。十ヶ月前、あたしの少し後に入店したやよいは、明らかにこの業界に向いていない。
「ちょっと、暇になったね」
「そうですね」
いつも通り、床にぺたんと座って煙草片手に声をかけると、休憩室にひとつしかない椅子に座ったやよいは、文字通り蚊の鳴くような声で答えた。
棒みたいな足をぶら下げてるガリガリに痩せたやよいは、先輩っていってもたったの二ヶ月だしトシだってタメなのに、未だにあたしに敬語を使う。みんなといつも距離を置いているようで他の女の子と全然仲良くしないから、誰もこの子の本名を知らない。
きっと、風俗嬢なんて男に媚びを売って生きてる最低の人間だから、あんまり関わりたくないとか思ってるんだろう。
いかにも普通の女の子で、いや普通というよりむしろ潔癖に近いように見えるし、とてもこういう店で働くタイプじゃない。
「ね、前から聞きたかったんだけどさ。やよいってなんで、このバイトしてるの?」
ちょっとした好奇心からで、別に意地悪な気持ちがあるわけじゃなかった。
同じ店で働いてるんだし、付き合いだってそれなりに長いんだから、もっとお互いのことを知り合っても悪くなかった。
なのにやよいはびくっと頬を引きつらせ、地味な顔を俯けてしまう。
「それは……その。なんていうか、夢のため、です」
「へー夢。いいなぁ、あたしそういうの、一個もないよ。どんな夢なの?」
「それは言えないけど……」
それ以上聞くのはよして、軽く相槌を打って再び煙草を咥える。ひょっとしたら、単に風俗嬢をバカにしてるんじゃないのかもしれない。すぐに人との間に壁を作りたがるのは、自分に自信のない人間にありがちなことだ。
でもそんな、自分に自信がない(かもしれない)やよいは、何気に客に人気がある。先月の売り上げは理寿とさおりさんに続いて、ナンバー3だったし。いつまでたってもおどおどしていて新人ぽく、ういういしいのが、女の子を辱め、いじめたい男たちにはとっても好評なのだ。
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