泡のように消えていく…第三章~Amane~<第13話>
<13話>
「いつ来た?」
「20分前」
「早っ!」
「七華たちが遅すぎなんだよ。お陰でこれ、吸い終わっちゃったじゃん」
空になったセブンスターの箱をフリフリすると、じゃあお詫びにこれ、と自分のヒョウ柄の煙草入れから一本くれたので、遠慮なくいただく。
確実に脳みそ溶けてるひなつに比べると、七華はいたってマトモだ。こんなところにちょくちょく出入りし、時々ドラッグを嗜むというが、普段は案外、真面目な社会人をやってるのかもしれない。
「あー、ミッくんだぁ」
さっきまであたしに引っ付いていたひなつが、今度は金髪ウルフヘアに女みたいに白くてつるんとした顔の、いかにもホスト風な男の首に飛びつく。男のほうもニヤニヤしながらひなつを抱きとめる。
うららを妊娠させ、逃げた男もあんな感じなんだろうか?
「雨音、七華ぁ! ひなつ、ミッくんと踊ってくるからちょっと待っててねぇー」
なんて、2人仲良く手を繋ぎ、踊りの輪に消えていく。絵に描いたようなバカップルぶりに、七華が苦笑している。
「あれ、彼氏?」
「澪輝の客らしいよ。ここ3週間ぐらいの付き合いだって」
「ふーん。ホスト? バンドマン? ヒモ?」
「さぁ? ま、いいんじゃない。2人とも幸せそうで」
「まぁね」
あたしたち3人の中には、どこかの誰かのようなうざったいお節介精神を発揮する者はおらず、誰が誰と付き合おうと、何をしていようと、本人の自由なんだし自分に関係ないんだからほっとけという暗黙の了解がある。
そのことがとても居心地よく、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ寂しい。
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