Yumika〜風俗嬢の恋 vol.2〜<第6話>
<第6話>
「まぁまぁ、いいじゃない。ゆかちゃんはさおりが来る前から煙草、吸ってたわけだし。何も今、さおりの顔見て吸い始めたんじゃないんだもの、ね」
元ナンバーワンの顔色が気になって、とりなそうとするまゆみさんの「ね」に素直に頷けず、「えぇ、まぁ……」と目が泳いでしまう。
さおりさんがあんまり納得してない顔で、仕方なそうにフンと鼻を鳴らした。そんなさおりさんに、まゆみさんはニコニコ笑いかけている。
ほんとに人格者っていうか、すごいいい人だと思う。この店の平和は、「ザ・いい人」まゆみさんのお陰で保たれている。
いい人だけど、まゆみさんの左腕にはカッターで切ったような痕がいくつもある。控え室にはカーテンがあるわけじゃないから、着替えの際に嫌でも見えてしまう。きっと理寿もやよいもさおりさんもみんな気付いてることだけど、誰も話題にしない。笑顔の下にまゆみさんはどんな苦しみを隠し持っているんだろう。そして客にリスカの痕を見つけられた時、どんな顔をするんだろう?
「煙草買ってきます」
理寿がお財布片手に休憩室を出て行く。
この店には客用の出入り口を出てすぐのところに、煙草の自販機がある。理寿は最近、時々その自販機を使うようになった。
「外で吸ってきてよね。ナンバーワンさん」
嫌みったらしくさおりさんが言うけれど、理寿はちっとも動じず、負け犬の遠吠えなんか聞こえてないって感じでサッサと足を動かす。
強いというより、何も考えてないんだろう。親友(だと思ってるけど、少なくともこっちは)のあたしですら、しばしば何を考えてるのかわからなくなる子だし。
そんな理寿には最近男が出来た。
元は客だった、五十歳近いおっさん。一度も染めたことのなかった髪を茶色くしたのも、煙草を始めたのも、きっとその男の影響だ。清純ロリ路線から外れたら、人気落ちるぞ。
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