泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第7話>
<第7話>
「琴乃ちゃんって言うんだー。ほんと、かわいいね。あ、いや、他の子がかわいくないって意味じゃなくってさー。どうも僕の好みじゃないのよぉー。スレた子、苦手でね。琴乃ちゃんみたいなのがいいって前から店長に言ってたんだけど、なかなかそういう子、入店しなくって。でも昨夜電話入って、この子ならどうですか絶対気に入りますよなんてすごい薦められるから、来ちゃった。大正解だよー」
褒められてるのにあまり嬉しくない。
気に入られれば気に入られるほど、プレイは濃厚で耐えがたいものになるだろう。
案の定、ソファーに並んで座って5分もすると、タナカさんの手はわたしの体をまさぐりだした。まずは娘にでもするように優しく頭を撫でて、肩、背中、そして胸へ。
火照った分厚い手に触れられているところが、たちまち腐っていくようだった。
「緊張してるの? ほら、気持ちいい声を出してごらん」
こういう言葉攻めは不快感を増幅させるだけなんだけれど、お仕事で来ている以上仕方ない。目をつぶって目の前にいるのがタナカさんだってことを意識から追い出して、あっはんとか、うっふんとか、喘ぐことに集中する。タナカさんの手がわたしの手を自分の股間へと誘う。そこは絶望的に固くなっている。
舌が絡まる。パンツが下ろされる。抱きしめられ、全身で感じる体温から逃げ出したくてたまらない。だから一生懸命自分を諭した。これはハルくんのためなんだって。ハルくんを救うために、わたしは体を張ってお金を稼いでいるんだと……。
繰り返し繰り返し自分に言い聞かせているうちに、不思議なことにわたしの奥はハルくんと繋がっている時のように、じんわり潤ってくる。ハルくんへの献身が充実感に変わり、体を刺激する。
目の前の男が気持ち悪ければ気持ち悪いほど、接客が辛ければ辛いほど、ハルくんのために頑張っているんだと思えた。わたしはなんて健気な女の子なんだろう、と。
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