泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第14話>
<第14話>
<2004年 園香>
県内でも有名な、ミッション系の名門女子校であるこの高校には、茶髪もルーズソックスもミニスカートも存在しない。化粧でもして登校しようものなら即シスターに連行され、顔を洗わされ反省文を書かされる。
桃花やリミだったらきっと、こんな学校一時間だっていられないだろうけれど、わたしはこの閉鎖的な環境がそんなに嫌いじゃなかった。
共学に通っている子からは、女子校って女同士の世界でいじめがひどいんじゃないかって思われがちだけど、実際はその逆。女の子ばっかりで男子がいないと恋愛問題でモメること(A子の好きな人にB子がコクったとか、そのテのかわいらしい話)がないから、中学の時よりもかえってみんな仲が良い。
制服は膝がすっぽり隠れる丈のスカートで、靴下もカバンも指定。服装も髪型も検査があって、髪を結ぶゴムの色まで決められている。自由はないものの、おしゃれにあまり関心がないわたしはそのことに別段不満は覚えない。
おしゃれは桃花やリミみたいに、自分に自信がある子の特権だと思っている。目が小さい地味顔のわたしは、そういう子じゃない。
「夕べまた親とバトっちゃってさー」
のりちゃんこと乃梨子が、オムライス弁当のせいでケチャップがついた口を歪め、しかめっ面で言う。
今どきの女の子らしい間延びしたしゃべり方は、シスターが聞いたらだらしないと注意されるところだけれど、昼休みの会話まで大人に管理できるものじゃない。
それぞれのお弁当のせいでいろいろな食べ物のにおいが混ざり合う教室の中は、延ばした語尾だらけだ。
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