泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第15話>
<第15話>
「親はさぁ、どうしても家から通える範囲のとこにしろって譲んないの。一人暮らしなんて絶対ダメ、危ないからの一点張り」
「うちもそう。なんなんだろね、親って。東京で一人暮らしした途端、不良にでもなるって思ってんのかねぇ」
さっちーこと幸恵がため息交じりに言う。
2学期になってから、いつもの仲良し3人グループの中でも、進路の話題が増えた。全校生徒の9割が大学進学を目指す高校だ。
『将来』は遠い未来の話じゃなく、17才のわたしたちのすぐ目の前にまで迫ってきている。目標も覚悟もないまま、勝手に大人にされてしまう。
「ソノはどうするのー? 東京、出る?」
のりちゃんがわたしに話題を振ってくる。
園香だからソノ。あだ名らしいあだ名を持ったことのないわたしが、初めて親友2人にもらった呼び名だった。
「まだわかんない。できれば、出たいかな」
「えー意外! ソノは彼氏と同じ大学行くもんだと思ってたからさぁ」
彼氏のハルくんは4才年上の大学生で、夏休みにバイトしていたコンビニで知り合った。のりちゃんとさっちーにも、そのあたりのことは話してある。
ハルくんのためにデートクラブで働いていることは、もちろん秘密だけど。
のりちゃんは地元の有名企業の重役の娘で、さっちーは県議の娘。2人とも普段は普通の女の子っぽく振る舞っているけれど、正真正銘のお嬢様だ。
デートクラブで売春してるなんて話したら軽蔑されるに決まってる。
「同じ大学っていってもハルくんは今3年で、来年4年だから。わたしが大学に入る年には卒業してるし」
「あ、そっかー。大学生だったら、もしかしたら東京で就職するかもしれないもんね。その時は彼氏を追いかけて東京に行くんでしょ?」
さっちーが勝手な解釈を繰り広げる。
本当は就職どころか、このまま大学で勉強を続けられるかどうかもアヤシいのに、そんな重い話、とてもこの2人にはできない。
親友と過ごす時間は楽しいほうがいい。深刻な話や難しい話なんてしないで、バカな話やどうでもいい話で笑っていたい。
親友なのに、じゃなくて、親友だからこそ。
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