泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第19話>
<第19話>
気が付けば、帰らないでと泣きながらハルくんに取りすがってた。お金さえあればと言うハル君も、今にも泣きそうだった。
だったらわたしがハルくんのために稼ごう、そう思うのは当たり前だ。
稼ぐといっても、コンビニのバイトじゃとてもハルくんの実家を救えるだけの額にはならない。
それならばとハルくんが紹介してくれたのは、未成年も雇ってくれるキャバクラだった。面接に行って説明を聞いたら、キャバクラといってもお触りもあればキスもされる店だと言う。ただお客さんの横に座って笑っているのと、触られるのとでは全然違う。
「まぁ、いいじゃんキスぐらい? それぐらい我慢できない?」
ハルくんに相談したらそんなふうに軽く返されてしまって、「やっぱりやめる」という言葉を飲み込んだ。
ここでキャバクラ勤めを断って、なんだ、俺のために頑張ろうって、嘘じゃないか。そう思われるのは嫌だった。
キャバクラ勤めは想像以上にハードだった。
お酒臭い男の人や脂ぎったおじさんに容赦なく唇を吸われ、胸を触られ、指であそこをかき回され、嫌な顔ひとつしないであんあん感じてるふりをしなきゃいけない。
桃花やリミみたいに単なるおこづかい欲しさだけだったら、とても耐えられなかっただろう。
ハルくんのためと歯を食いしばり、我慢して仕事を続けていると、松木さんに会った。
一人でやってきた松木さんは彫りの深い端正な顔立ちをしていて、センスのいい服装も爽やかな香水の香りも、こういう店に来るような男の人には見えない。松木さんはわたしに触ろうとしないまま、ウイスキー片手に持ち掛ける。
「君、18才未満でしょ? いや、大丈夫。警察に言ったりしないって。ただ、もったいないなって思ってさ、もっと稼げる仕事あるのに。やってること、今と大して変わんないけど、お給料は全然違うよ」
松木さんは夜の世界のスカウトマンだった。
次の日さっそく、松木さんに付き添われ今勤めているデートクラブに面接に行った。キスやお触りどころか、最後の最後まで「お付き合い」しなきゃいけないと知って、戸惑った。また、ハルくんに相談した。
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