泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第22話>
<第22話>
<2014年 すみれ>
最初に知依ちゃん、次に沙和さん。ここまでは想像通り、いや2人とも1万円もカンパしてくれたんだもの、想像以上の成果だ。
問題はここから。
うららちゃんの言う通り、雨音さん始め、こういうことをよく思わない人は少なからずいる。とはいえ、自分に協力的な人ばかりに頼むわけにもいかない。そもそも協力的な人なんて、知依ちゃんと沙和さんぐらいしかいないんだから……。
「すみれさんの気持ちはわかりますけれど……。わたし、その、うららって人のこと知らないし。一週間前にここ入ったばかりなんですよ?」
新人の奈美ちゃんとは割と仲良くできてると思ってたから、そう言われてショックだった。仲が良いと思ってたのはわたしだけで、奈美ちゃんのほうはわたしのことなんてちっとも信頼してないんだと気づいた。
ここで引き下がっちゃダメだ。
風俗なんて、もともと人を信頼したりされたりすることが難しい職場だ。でも本当はみんな過剰に警戒しているだけで、自分から心を開いてきちんと話せば、わかってくれる人は必ずいる。
「心配するのは、もっともだけど。うららちゃんは妊娠して彼氏に逃げられて親にも見捨てられて、たった一人で頑張ろうとしてるの。本当にいい子なのよ」
「いい子なのは、わかりましたけど……。こっちだってやっぱり事情があって働いてるんだし。自分の体を使って稼いだお金を、知らない人のために使うっていうのは……」
「じゃあ、一度うららちゃんに会ってみる? 会ってみたら、奈美ちゃんだってきっと」
「勘弁してくださいよ」
奈美ちゃんの声が尖る。
わたしをまっすぐ見ない目は、理不尽にかけられた迷惑にうんざりして、なんとか無難にこの場を切り抜ける方法を探しているようだった。
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