泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第23話>
<第23話>
「すみれさんのことが嫌いなわけじゃないけど、そういうの無理です。はっきり言ってすみれさんがやってること、非常識です」
「非常識って……。募金みたいなものじゃない」
「遠い国の恵まれない子どもたちや震災で家を失った人のために募金するのと、自分のせいで不幸になった人にカンパするのとは、全然違うじゃないですか」
きっぱりと正論を突きつけられて、言葉に詰まってしまう。
そう、自分のせいだ。
うららちゃんがあんなことになったのも、わたしが未だに風俗を抜け出せず表の世界で生きられないのも。
自分のせいで堕ちていった人間には、同情されたり手を差し伸べられたりする資格はないんだろうか。不条理な不幸を背負っている人と同じように、本気で苦しんでいるのだとしても。
「そんなに大袈裟に考えることじゃないと思うけどな。何も今日のお給料全部をってわけじゃないの。そこからほんのちょっと、気持ちでいいのよ」
そう言った途端、背中でドアが開け閉めされる音がして、振り返ったら雨音さんと目が合った。困り顔の奈美ちゃんに状況を察したのか、不機嫌さを隠そうともしない。
少しだけ、迷った。
あれだけうららちゃんを嫌っていた雨音さんだ。カンパなんてとんでもないって思うかもしれない。
でも、うららちゃんに伝えたかった。雨音さんもカンパしてくれたんだよって。
雨音さんに二度とここに来るなと言われ、泣いていたうららちゃんを思い出す。うららちゃんと雨音さんの関係が、あれで終わっちゃったらよくない。
このままじゃ2人、死ぬまで話し合うこともできないんだ。
「雨音さんも、カンパお願いします」
意を決して雨音さんに歩み寄り、茶封筒を突き出して言うと、雨音さんはぴくりと眉根を動かして露骨に苛立ちを示した。
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