泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第24話>

2015-04-12 20:00 配信 / 閲覧回数 : 834 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Sumire 泡のように消えていく… 連載小説


 

JESSIE

 

<第24話>

 

「もう誰か入れたの?」

 

「4人も協力してくれたの。沙和さんと知依ちゃんなんて、1万円ずつ出してくれた。さすがみんな、こういうところに勤めてるだけあるわね。みんなで出し合えばすぐ集まると思う」

 

「そのカンパって、うららのだよね?」

 

ギロリと音がするほどきつく見つめられたら、さすがに言葉が出ない。不穏な空気を感じたらしく、奈美ちゃんが逃げるように喫煙室に入っていく。

 

「まさか、出産費用?」

 

「雨音さん、うららちゃんは変わったわ。わたしも最初は、あの子が母親になるなんて無理だと思ってた。でもこの前うららちゃんと会って話して、大丈夫だって確信できたの。この子は頑張れる、って」

 

ここで引きたくなかった。手の中の茶封筒をお守りのように握りしめ、言葉を尽くす。

 

雨音さんだって鬼でも悪魔でもなく、普通の人間で、普通の女の子だ。とことん話し合ってわかり合えないわけない。

 

そう信じたい。

 

「雨音さんにもうららちゃんのこと、信じてほしいの。今までのことは今までよ。あの子は母親になって、今まで滅茶苦茶だった分、取り返す気でいる。人って変われるの」

 

「あんた、なんでそんなお人よしなのよ? マジ、バッッッッカじゃないの?」

 

雨音さんの丸い目が吊り上がり、冷たい唾が飛ぶ。

 

いきなり怒りの矛先がわたし自身に向かうなんて。さすがに少し怯んだけど、これぐらいは想定内だ。ここで引き下がれない。

 

「わたしのことを嫌いなら嫌いでいい。でも、うららちゃんのことは信じてあげて」

 

 

 




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