泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第24話>
<第24話>
「もう誰か入れたの?」
「4人も協力してくれたの。沙和さんと知依ちゃんなんて、1万円ずつ出してくれた。さすがみんな、こういうところに勤めてるだけあるわね。みんなで出し合えばすぐ集まると思う」
「そのカンパって、うららのだよね?」
ギロリと音がするほどきつく見つめられたら、さすがに言葉が出ない。不穏な空気を感じたらしく、奈美ちゃんが逃げるように喫煙室に入っていく。
「まさか、出産費用?」
「雨音さん、うららちゃんは変わったわ。わたしも最初は、あの子が母親になるなんて無理だと思ってた。でもこの前うららちゃんと会って話して、大丈夫だって確信できたの。この子は頑張れる、って」
ここで引きたくなかった。手の中の茶封筒をお守りのように握りしめ、言葉を尽くす。
雨音さんだって鬼でも悪魔でもなく、普通の人間で、普通の女の子だ。とことん話し合ってわかり合えないわけない。
そう信じたい。
「雨音さんにもうららちゃんのこと、信じてほしいの。今までのことは今までよ。あの子は母親になって、今まで滅茶苦茶だった分、取り返す気でいる。人って変われるの」
「あんた、なんでそんなお人よしなのよ? マジ、バッッッッカじゃないの?」
雨音さんの丸い目が吊り上がり、冷たい唾が飛ぶ。
いきなり怒りの矛先がわたし自身に向かうなんて。さすがに少し怯んだけど、これぐらいは想定内だ。ここで引き下がれない。
「わたしのことを嫌いなら嫌いでいい。でも、うららちゃんのことは信じてあげて」
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