泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第28話>
<第28話>
雨音さんと沙和さんがプレイに入った後、わたしにもお客さんがついた。
ひと月にいっぺんのペースでやってくる常連の田中さんは、35才の独身、ひょろりとした体と笑うとほとんどなくなってしまう細い目が特徴な、ごく普通のサラリーマンだ。
セックスよりも癒しを求めている人、エッチなことをしている時間よりもその後で女の子と話す時間を大事にしている人は少なくない。
田中さんも、その一人。ソープは一回抜いておしまいじゃなくて、時間をたっぷり使って二発三発射精させるのをセオリーとしているけれど、田中さんはそれを望まない。
即尺からそのまま交わって絶頂を迎えたら、2人でのんびりお風呂に浸かり、その後はベッドに並んで腰かけて時間が来るまでずっとしゃべっている。毎回差し入れも持ってきてくれて、今日はデハ地下で買ったという、生クリームとカスタードクリームが半々ずつ入ったシュークリームだった。
フロントに田中さんはコーヒー、わたしは紅茶を頼み、おやつを楽しみながら延々と話をする。
「映画に誘ったらさぁ、ごめんなさいそれもう見ちゃったんです、なんて、即答されてさ。考える間もないって感じで。ほんとは見てないのに、俺と行きたくないだけなのかなって思っちゃうよねー」
「そんなにマイナス思考になることないんじゃないですか? 本当に見ちゃったのかもしれないし。それにその映画が見たくなかったとか」
「そういうことかぁ。じゃあ、すみれちゃん的には、どういう映画だったらいい?」
田中さんは同じ職場に好きな子がいるけれど、完全な片思い。なんとか距離を縮めようとはするものの、相手はそっけない反応ばっかりで、最近諦めモードなんだそう。
正直、話を聞く限り、その子は田中さんに気がないんだろうなと思うけれど、それをそのまま伝えるわけにもいかないから、ひたすら励ます。
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