泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第41話>
<第41話>
<2004年 園香>
おじいちゃんとおばあちゃんは既にベッドに入り、今夜も喧嘩に忙しい雅臣と美月を子ども部屋へ追いやって、親子3人きりの家族会議がスタートする。
ダイニングテーブルの上には中間テストの成績表。あんまり過ぎる結果に怒りを通り越し、わたしと一緒に落ち込んでいるお父さんとお母さんに、目を合わせられない。
ぼーん。ぼーん……。壁の時計が23時を告げる。
11回目の振り子の音が静まり返った家じゅうに響き渡った後、お母さんがぽつりと唇を動かした。わたし以上にショックを受けているのが伝わってきた。
「中学校までと違って、頭のいい子ばっかりが集まる高校だっていうのは、知ってるけど。いくらなんでもひど過ぎるんじゃない?」
「ごめんなさい……」
「謝ったって、しょうがないじゃない。理由はわかってるでしょう? 週に3日もバイトしてるから、勉強時間が足りないのよ」
テスト期間中は電車の中でも教科書を開いたり、デートクラブの待機室で桃花たちに呆れ顔をされながら宿題を片づけたり、忙しいなりに勉強の時間は確保していたつもりだけど、全然足りなかった。教科書を開いただけでぼんやりしてたんじゃ、何の意味もない。
ハルくんさえいれば成績も将来もどうでもいいと思ってしまう。
もう、中学までのように目標も理由もない勉強には打ち込めない。それで成績が下がれば、親に責められることもわかってたのに。いい子を演じなきゃという思いが、わたしを支えきれなくなっている。
「言いたいことはわかってるわね」
「……え」
「バイト、辞めなさい。来年は受験生なんだし、そんなことやってる暇ないでしょう」
「ちょっと待って。そんなの無理」
今バイトを辞めたことになってしまったら、週に3回もデートクラブに行くのに、どういいわけしたらいいだろう。
図書館で勉強? さっちーやのりちゃんの家で勉強? それも、毎回じゃ無理がある。これからはお母さんの監視も厳しくなるだろうし。
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