シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第1話〜

2015-07-15 20:00 配信 / 閲覧回数 : 934 / 提供 : ヴィクトリカ・ゾエ・キレーヌ / タグ : 裏取引 連載小説 <叫び>


 

JESSIE

 

<第1話>

 

70分コースは背面のみ、90分コースは背面後に仰向け施術を行うようにと店のマニュアルにはあるが、あたしは90分コースでも仰向けスタート、その後うつ伏せにさせる。

 

いきなり「仰向けでお願いします」と言うと「えーっ恥ずかしいなぁ」と戸惑う客も多いが、これはマッサージ後ナチュラルに背面からの回春へと移行し、四つん這いに持ち込むためのワザ。四つん這いなら客の両手が塞がれるためこちらが触られるリスクが低く、その上勃ちも良い。

 

あわよくば、四つん這いのまま後ろからフィニッシュ。馬乗りや添い寝の状態でサービスする子も中にはいるが、その分嬢の危険度は高くなる。

 

もう2年出張マッサージの仕事をしているが、あたしは未だに啓太以外の男に触れられることに激しい嫌悪感を覚える。

 

たぶんその点は、風俗嬢失格。

 

「あぁん、気持ちいいよぉ、秋穂ちゃあん」

 

2年使っても未だ、まったく耳に馴染まない源氏名を呼びながら、3段腹をタプンタプン揺らしつつ、バーコード剥げがチャームポイントのおっさん客はさりげなく太ももに手を伸ばしてくる。汗と性欲が滲むねばっこい手が肌に触れるか触れないかのギリギリで素早く握り、たしなめた。

 

「だめぇー、秋穂はお触りNGなのぉ。秋穂の邪魔するなんて、いけない子ね」

 

「そんなこと言わないでよぉ、他の子は触らしてくれるのに……。ああぁ、だめぇぇん」

 

しつこく触りたがるが、悲しいほど早い。こちらの思惑通り、四つん這いのままシーツの上に溜まっていたものをまき散らした。

 

3段腹の巨体に四つん這いはキツかったのか、お腹が悪臭ヨーグルト地獄みたくなるのも構わずふにゃりとベッドの上に崩れ落ちた。ふりゃりというよりむしろドスン、か。カバが倒れるみたいな音がする。

 

案外、ラクな客だった。そして今回もあたしの体は無事。

 

ざまぁみろ。

 

 

 



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