シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第3話〜
<第3話>
24歳のユナの夢はネイリスト、しかしスクール代はバカにならず、見栄なのか親の援助も一切断っているため、こうして夜のバイトに精を出す日々。
一応マッサージ店なので爪を伸ばすことは禁止されているけどそこは風俗、短い爪ならネイルもオッケーなので、ユナの爪先には今日もまっピンクのバラが咲いている。
「ちょ、秋穂さんいくらなんでも食べ過ぎ! それで5コ目っしょ?」
「ダメだよぉー。疲れてる時こそちゃんとご飯食べなきゃ。滋養強壮には山芋がいいよ」
薬膳の勉強もしている香織が真顔で言う。
香織はマッサージのみならずアロマや薬膳も取り入れた、総合リラクゼーションサロンを持つことを目標に頑張っている。
胸に秘めた夢のため、それぞれの未来ため、日々、本能剥き出しの野犬みたいな男たちの相手をし、「触らせて」だの「電話番号教えて」だの、エゴイズム丸出しの要求を笑顔で交わし、金を稼ぐ。
その点はこの店で働く女の子たち、みんな同じだ。もっとも、あたしの場合は自分のためじゃなくて、啓太のために身体を張って働いているわけだけど。
「えーあたし山芋無理ぃ! あの、食べた後の口の周りかゆくなる感じがさぁ」
よほど山芋が嫌いなのか、いずみが両肩を抱える。まだ着替えておらず、サイドのファスナーで止めるタイプで着脱がしやすい、施術用のワンピースのままだ。
「何も山芋じゃなくてもいいの、ネバネバ系の食材すべてが健康にいいんだよ。男性ホルモンの分泌を促してくれるしね」
「えー男性ホルモンって女性が摂ると性欲高まるってやつっしょ? やだやだやだ、性欲高まりたくない! むしろそんなことしたくない! ここの仕事だってユーウツなのに」
「うっそ、ユナちゃんもうそんな感じになっちゃった!? ソープとか、もっとハードな店ならそうなっちゃう子も多いっていうけど、ここエステだよ? 超サービス軽いよ?なのに?」
話の中心が24歳にしてまるきり性欲がない、エッチが嫌いというユナの悩みに移り、年上嬢2人がマジに相談に乗り始めたところで、あたしの携帯が鳴る。
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