シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第4話〜

2015-07-18 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,062 / 提供 : ヴィクトリカ・ゾエ・キレーヌ / タグ : ヒモ 連載小説 <叫び>


 

JESSIE

 

<第4話>

 

ディスプレイの表示は『啓太』。

 

前の彼氏との悲惨なエピソードから、その前の彼氏とのさらに悲惨なエピソードへ、打ち明け話がどんどん深刻になっていくユナの前で、同棲中の彼氏からの電話を取るのは憚られ、さりげなく給湯室へ移動した。

 

待機室と違って暖房が効いていないので、ワンピースの半袖から突き出た両腕にざわり鳥肌が立つ。

 

「もしも、けい……」

 

『くーーーみーーこーーー!! ごめんよ久美子、マジでごめんよぉ、毎晩毎晩毎晩久美子にこんなことさせてる俺は、最低な男なんだよぉぉぉぉ!! 死んだら地獄の猛火に焼かれるんだあぁぁ』

 

そういうシャウトはステージの上でだけやってほしいと思いながら携帯から耳を離し、思わずため息が出る。

 

彼氏からの電話って、普通はもっとテンション上がるもんじゃないの?

 

しかし、ため息しか出ない。

 

そういえば今日、ライブ後の打ち上げで飲みに行くとは聞いてたけど。もう4時過ぎてるのにまだ帰ってないのか。

 

『あー、もしもし? 久美子ちゃん、ごめんね? もう仕事終わったかな?』

 

バンドリーダーでギターのジンさんの落ち着いた声が聞こえてきて、ちょっとホッとする。よかった、啓太、1人じゃいないんだ。

 



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