シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第4話〜
<第4話>
ディスプレイの表示は『啓太』。
前の彼氏との悲惨なエピソードから、その前の彼氏とのさらに悲惨なエピソードへ、打ち明け話がどんどん深刻になっていくユナの前で、同棲中の彼氏からの電話を取るのは憚られ、さりげなく給湯室へ移動した。
待機室と違って暖房が効いていないので、ワンピースの半袖から突き出た両腕にざわり鳥肌が立つ。
「もしも、けい……」
『くーーーみーーこーーー!! ごめんよ久美子、マジでごめんよぉ、毎晩毎晩毎晩久美子にこんなことさせてる俺は、最低な男なんだよぉぉぉぉ!! 死んだら地獄の猛火に焼かれるんだあぁぁ』
そういうシャウトはステージの上でだけやってほしいと思いながら携帯から耳を離し、思わずため息が出る。
彼氏からの電話って、普通はもっとテンション上がるもんじゃないの?
しかし、ため息しか出ない。
そういえば今日、ライブ後の打ち上げで飲みに行くとは聞いてたけど。もう4時過ぎてるのにまだ帰ってないのか。
『あー、もしもし? 久美子ちゃん、ごめんね? もう仕事終わったかな?』
バンドリーダーでギターのジンさんの落ち着いた声が聞こえてきて、ちょっとホッとする。よかった、啓太、1人じゃいないんだ。
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