シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第10話〜
トリを務める人気バンドのあくまで「前座」扱いとして出てきた啓太たちは、正直言って可哀想なくらいの華のなさだった。
「ギター、でかっ」
啓太がステージに立った途端、美嘉が呆れたような一言を放った。
身長158センチしかない小柄な啓太がギターを抱えると、何かのコントみたいにギターが大きく見える。しかも下手くそなボソボソ声のMCに、場内からは苦笑が漏れた。
それが、曲が始まった途端、空気が一変する。
悲鳴のようなソウル溢れるギター、脊髄にまで叩き込んでくるドラム、抜群の安定感を誇るベース、そしてその小学生みたいな容姿からは想像のつかないパワフルなボーカル。
まったく観衆から期待されていなかった啓太たちは集まったすべての目という目、耳という耳に鮮烈な印象を残した。歌詞もメロディも、一秒たりとも聞き逃させず、直球でお腹の真ん中へ飛び込んでくるインパクト。ストローでジントニックを飲んでいた美嘉は、驚きのあまりストローを口から離した。
「しゃらくせぇわ、ボーケー!!!!」
地響きを伴うシャウトで曲が終わった瞬間、あたしはもう、才能ごと歌声ごと、啓太に惚れていた。
バンドマンといったら、半端なくモテモテで競争率高そうなイメージだったけど、啓太の場合は出待ちして携帯番号とアドレスを書いたメモを渡せばいいだけだったので、付き合うのは造作もなかった。
問題は、その後。
バンドマンといったら、DV・浮気性・ジャンキーの3点セットが常識なオオカミのようなイメージだったけど、啓太はオオカミどころかヒツジのような男だった。ヒツジの皮をかぶったオオカミでもなく、骨の髄までヒツジでとことんお人よしで、よって、周りのオオカミのような男ヒモ 連載小説 <叫び>たちに騙され、利用されまくってた。
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