シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第12話〜
<第12話>
しかしそれは啓太に夢を諦めさせてしまうのと同じことで、いくらアホの啓太でもそれぐらいはちゃんとわかっていて、
「どうしよう、久美子。俺……音楽、諦めたくない」
やっぱりボソボソしてるけどMCの時よりはハッキリした声で、言った。
それであたしは決意した。
決意してしまった。
「わかった、あたしが何とかする。夜の仕事をすれば、200万ぐらいすぐだよ」
あたしの顔をマジマジ見る啓太の目からは涙が引っ込んでいた。
夜の仕事といってももちろん最初はキャバクラぐらいで考えていた。けれども、繁華街でもらってきた高収入求人誌をめくって、既に30歳を迎えたあたしが今からキャバ勤めをするのは難しいことにすぐに気がついた。
だいたいどの店も、25歳ぐらいまでしか求人がない。
都内のキャバはある程度若くなければ雇ってもらえないし、いわゆる熟女パブのようなところで働いているのは、若いうちからその世界にどっぷり浸かり、それなりの努力を続けた上で、自分のお客さんをしっかり掴んでいる人たちなのだ。
となれば当然、風俗へ行くしかなくて……。
あたしは啓太の人柄だけでなく才能にも惚れていたし、その才能を守るためならヘルスだってソープだってなんでもやる気でいた。しかし、その必死の決意は啓太の涙によってあっけなく却下された。
「頼むからソープもヘルスも辞めてくれ、俺、久美子が他の男にキスされたり触られたりなんて耐えられない、久美子にそんなことさせるくらいなら、俺が二丁目で働くよ」
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