シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第15話〜
<第15回>
そうですよねーと笑って苦い気持ちを誤魔化し、腰に乗っかって肩のマッサージ。
この時太ももが触れる感触に耐え切れなくなり、女の子の体に手を伸ばしてくれる客も多いのだが、木嶋さんはそんなことはしない。あくまで紳士的で、店のルールを理解して遊んでくれる。
「だって、女の子触りたい時はデリヘル呼ぶもん」
と言われてしまうのが、少し寂しいけど。
寂しいと思うのは、木嶋さんが比較的イケメンなのと、仕事だって割り切っているつもりのあたしにも多少の独占欲があるからなのかな。
「なんでまだこの仕事してるの? 借金は返したんでしょ?」
「はい、これを機に懲りたみたいで、さすがに後先考えず友だちにお金を貸すのはやめてくれました。でも、音楽やるのってすごいお金かかるんです。啓太ももちろんバイトしてるけど、それだけじゃ全然足りなくて……。日々の生活費、光熱費に始まって、スタジオ代に楽器代、あとライブハウスにノルマも払わなくちゃいけなくて」
「はぁ、ノルマ!? 久美子ちゃんの店だってノルマないよね!?」
「まぁ、指名数があんまり少ないとプレッシャーかけられることはあるけれど、直接的なノルマみたいなのはないですね」
「なんで風俗にすらノルマないのに、ライブハウスにノルマがあるんだよ。意味わかんねーよ。絶対悪徳商法だよそれ、消費生活センターに今すぐ相談しなさい」
あはは、そうですよねーと笑いながらリンパの流れに沿って肩を回す。
木嶋さんに言われる間でもなくわかってる。
あたしだってもう、32歳。全然若くない。
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