シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第16話〜
<第16回>
たまに会う学生時代の友だちはほとんど結婚していて、子ども2人、3人は当たり前だ。
あの美嘉だって去年ついに、バツイチ子持ちの年上彼氏と結婚して、いきなり中学生のママになっちゃったくらいだし。
同年代の友人たちが続々結婚し、家庭を築いていく。
そんな中あたしは30歳を過ぎて、甲斐性のない彼氏のため、夜の仕事をしてお金を稼いでいる。
ハタから見れば、これ以上なくバカなことをしているだろう。
娘が東京で真面目なOL生活を送っていると信じ込んでいる実家の親に知られたら、親戚じゅう巻き込んで大騒ぎになるに決まってる。
当然、啓太のことはまだ親に紹介できていない。
「俺さ、名古屋行くんだよね」
いつものように回春を開始しようと、背面から太ももの内側へ手を這わせかけたところで、唐突に言われた。自然、指が止まる。
「えっ、それって」
「要は転勤だよ。前言わなかった? うち、建設だから結構多いんだよね、特に俺みたいな独り身はあちこち飛ばされる」
「じゃあもう、会えなくなっちゃいますね」
「寂しい?」
「寂しいですよ、そりゃ」
本気でそう思っていた。
これで上客がひとり減るとかそういうことじゃなくて、気心知れて、啓太の悩みも話せて、悲しいこと苦しいこと、待機室ですら言えない風俗嬢的鬱憤を打ち明けられる人が1人、あたしの周りからいなくなってしまうことが、悲しかった。
「じゃあさ、一緒に来ようよ」
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