シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第19話〜
<第19回>
大丈夫か……。
骨の髄までヒツジな啓太には、骨の髄までヒツジなおかげで、仲間に恵まれている。
啓太には言ってないけど、今日これからあたしが出て行くことはジンさんとタクさんとユキさん、そしてマスターにメールしておいた。あたしと入れ違いに3人が大挙して押しかけてきて半分死んだようになっている啓太をバーまで引っ張って行き、みんなで仲良くゲロにまみれたら悲しみも少しは忘れられるだろう。
そして、お金だって協力してなんとか工面するだろう。
そして、これも啓太には言ってないが、冷蔵庫の隅っこに当面の生活費が入った封筒を仕舞ってある。
最後の最後まで激甘だ、あたしは。
「久美子、俺」
ドアノブに手をかけた時、啓太が言った。
いつものボソボソ声じゃなくて、歌う時の声に近かった。
「俺、久美子がしてくれたこと、絶対に無駄にしないから。必ずメジャーいって、ミリオンセラー出して、紅白にだって出て全米デビューもしてニルヴァーナみたいな伝説のバンドになって。そして、久美子が昔こいつと付き合ってたんだ、売れてなかった時あたしがこいつを支えてやってたんだって、自慢できるような男になるから、絶対なるから、だから」
泣いてなかったけど、声が震えていた。歌うように、激しく。
「だから絶対、幸せになって」
それだけは言ってほしくなかったのに。
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