シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第20話〜

2015-08-18 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,058 / 提供 : ヴィクトリカ・ゾエ・キレーヌ / タグ : ヒモ 連載小説 <叫び>


 

JESSIE

 

<第20回>

 

本当は、あたしは、あなたのそばでなきゃ幸せになれない。

 

一番言いたいことをぐっと飲み込んで、代わりに笑いまじりに言った。

 

「もう、なんで生きてるのかなんて言っちゃだめだよ。どうせ30歳になるんだったら、80歳や90歳まで長生きして、いい曲いっぱい作りなさいよね。音楽の教科書にだって載っちゃうようなさ。マイ・ウェイみたいな」

 

「音楽の教科書のマイ・ウェイなんてくそくらえだよ。俺が好きなのは、シドが歌ったバージョン」

 

最後の会話はそれで終了。振り返らずに、ドアを閉めた。

 

木嶋さんとの待ち合わせ場所を目指し歩きながら、木枯らしが頬を叩く冷たさが心地よかった。途中、猛ダッシュでアパートへ駆けるジンさんたちとすれ違って、引き返したくて引き返したくてうずうずしている心に、上手いこと歯止めがかかった。

 

今、啓太はようやく夢に対して本気になれたのだ。

 

あたしが今戻ってしまったら、啓太はまた、泣き虫のヒツジになってしまう。

 

わかってるわかってるわかってる。

 

自分でよくわかってる、なのに。

 

ヒツジの代わりに、あたしの涙が止まらない。いくら木枯らしに吹かれても、乾いてくれない。

 

さようなら、世界中の誰にも負けないくらい大好きだったよ。

 

あなたを支えきれる、強い女じゃなくてごめんね。

 



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