シリーズ<叫び>エピソード3「ヒモ」〜第20話〜
<第20回>
本当は、あたしは、あなたのそばでなきゃ幸せになれない。
一番言いたいことをぐっと飲み込んで、代わりに笑いまじりに言った。
「もう、なんで生きてるのかなんて言っちゃだめだよ。どうせ30歳になるんだったら、80歳や90歳まで長生きして、いい曲いっぱい作りなさいよね。音楽の教科書にだって載っちゃうようなさ。マイ・ウェイみたいな」
「音楽の教科書のマイ・ウェイなんてくそくらえだよ。俺が好きなのは、シドが歌ったバージョン」
最後の会話はそれで終了。振り返らずに、ドアを閉めた。
木嶋さんとの待ち合わせ場所を目指し歩きながら、木枯らしが頬を叩く冷たさが心地よかった。途中、猛ダッシュでアパートへ駆けるジンさんたちとすれ違って、引き返したくて引き返したくてうずうずしている心に、上手いこと歯止めがかかった。
今、啓太はようやく夢に対して本気になれたのだ。
あたしが今戻ってしまったら、啓太はまた、泣き虫のヒツジになってしまう。
わかってるわかってるわかってる。
自分でよくわかってる、なのに。
ヒツジの代わりに、あたしの涙が止まらない。いくら木枯らしに吹かれても、乾いてくれない。
さようなら、世界中の誰にも負けないくらい大好きだったよ。
あなたを支えきれる、強い女じゃなくてごめんね。
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