Yumika〜風俗嬢の恋 vol.2〜<第18話>
<第18話>
気がついたらあたし自身が、さっきのおそろしく醜い女になってた。
クツも脱がずに家に上がりこみ、手当たり次第にそのへんのものを拾い上げては統哉に投げつけた。
お気に入りのクローバー模様のコップは割れ、リモコンは電池蓋が外れて中身が飛び出し、統哉が可愛がっていたエンゼルフィッシュの水槽もひっくり返された。床で銀色のひれがぴしぴし、苦しそうに跳ねている。
それを踏んづけた。ぐにゃっと命がつぶれる音がした。
何か言ったと思うが、何を言ったのかよくわからない。
さっきの変な女のせいもあって、完全に感情のコントロールが効かない。
女は何度か金切り声を上げた後、タオルケットにくるまって部屋の隅でうずくまってた。
本棚を振り上げて中の本ごと投げつけようとしたあたしがあまりの重さに引きずられ、ぺたんと床に尻餅をついたところで女が立ち上がった。
「何よ!! 彼女、今日、大丈夫だって言ったくせに!! 嘘つき!! 面倒くさいのは嫌って言ったでしょ!」
女は統哉に投げつけるように言うと、素早くワンピースを被り、床に広がってたバッグを拾ってそそくさと逃げ出した。
実にあざやかな身のこなしに、統哉に「めっちゃスゴかった」とメールを送ったのはこっちのほうなんじゃないかと、直感で思った。どうやら統哉に本気じゃないことに、安堵と悔しさを同時に覚えた。
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