Kiyomi〜風俗嬢の恋 vol.4〜<第1話>

2014-01-19 20:00 配信 / 閲覧回数 : 927 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Kiyomi 連載小説 風俗嬢の恋


 

JESSIE

 

<第1話>

 

この仕事を始めた時から、いつかは来るとわかっていたことだった。わかっていて、現実から目を背け続けていた。

 

現実なんて思い通りにならないことの集合体で、正面からまともに見つめたら苦しくなるだけ。逃げるくらいでちょうどいいんだと。

 

「はっ? 店を辞めろって?」

 

声が裏返った。

 

セックスの後の、皺が寄ったベッドの中、腕枕されながら富樫さんの横顔を見上げる。富樫さんはタバコの灰を落としながら、いつもと同じけだるそうな顔をしていた。

 

この人は店にいる時もあたしと会ってる時も、反抗期の子どもがそのまま大人になってしまったような、重たい拒絶感を含んだ目で世界を見る。

 

最初はこの、何を考えているかわからない目に惹かれたんだっけ。

 

「辞めるんじゃない、系列店に移ってもらうだけだよ」

「それ、同じじゃん」

「清美も知ってるだろう? うちは基本、22歳までなんだ」

「ちあきさんは24歳までいたじゃない」

 

あたしの前のナンバーワンだったちあきさん。あたしと同じで胸が大きくて、でもあたしと違ってほっそりしてて、ぽってりした唇も常に男に媚びているような目つきも、がっつり客のハートを掴んでいた。店を辞めたのは2年前だから、今は26歳になってるはずだ。

 

「覚えてないのか? ちあきさんの最後、悲惨だったろう。売り上げが落ちちゃって」

「覚えてるけど……」

 

若いロリ系の子を集めているのがウリの店だから、制服が似合わなくなってしまったら、もういられない。客にオバサンと言われ、休憩室の端っこで泣いていたちあきさんの姿を思い出す。

 

ちあきさんにはひどいけれど、実際、あの人は24歳よりもだいぶ老けて見えた。ほうれい線の深さからすると、28~29歳ぐらい。この仕事をしている女の子は、老けるのが早いのかもしれない。日々、若さと美貌を切り売りしているうちに、このふたつの宝物はどんどん磨り減っていく。

 

逃げるように系列のソープに移ったちあきさんが、今どうなっているのかなんて、考えたくもなかった。

 

 

 




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