フェイク・ラブ 最終章〜Rin〜<第31話>

2014-09-18 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,061 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Rin フェイク・ラブ 連載小説


 

JESSIE

 

<第31回目>

 

「凛、俺は」

 

「冨永さんはおかしい。彼女とこんなところにきて、彼女がこんな格好になってて、普通落ち着いてなんかいられない。落ち着いていられるのは、ほんとはあたしを好きじゃないからよ」

 

「そんなこと」

 

「そんなことあるでしょっ! 結局、冨永さんも他の奴らと同じなんだ、店と同じように客と同じように、風俗嬢を、あたしを、バカにしてるんだ。汚い女、最低、クズ、人間以下って思ってるんだっっ」

 

「凛!!」

 

冨永さんの声に初めて険しい響きが宿る。

 

あたしが手首を掴んでいた手に、いつのまにか逆に手首を掴まれている。そのままズボンの前へ、冨永さんがあたしの手を誘う。

 

ジーンズの分厚い生地ごしでもわかる。

 

それは死んだようにぐったりしていた。

 

「わかるだろ、凛。俺、できないんだ」

 

今にも泣き出しそうな冨永さんの目が、揺れながら、あたしを見つめていた。

 

想像はしていたことだった。

 

もしかしたら何か病気をしているとか、どうしようもない原因でそうなってるのかもしれない。

 

でも、冨永さんの悲しい目は、もっと恐ろしい理由があることを訴えている。

 

「いつかは、ちゃんと言わなきゃいけないと思ってた。でも、勇気がなくて……。知ったら、凛が離れていきそうで怖かった。凛を傷つけそうで怖かった。凛は生まれて初めてできた、俺の本物の幸せだから。どんなことがあっても、絶対凛を失いたくない」

 

冨永さんが力なく手を離し、あたしは上半身ブラジャー1枚下半身はスカートという中途半端ないで立ちで、体の横にぶらりと手を下ろした。

 

エアコンが効いていなくてむき出しの肌にざらりと鳥肌が立った。

 

「前も、この業界の女の子と付き合ったことがあるって言っただろ。その時からなんだ。自分の好きな子が、金のために他の男に好きなようにされている。俺の仕事は、その好きな子を、そいつらの元に送り届けること……。俺にとってこの仕事は、そういうものなんだ」

 

 

 




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