Kiyomi〜風俗嬢の恋 vol.4〜<第7話>
<第7話>
12時からずっと店に出ていて、21時で上がった。
一歩店の外に出ると、熱気に膨らんだ風じゃなく、少し肌寒いぐらいの空気がTシャツから飛び出した腕を撫でる。
歓楽街の端っこ、個室ビデオとキャバクラに挟まれて営業しているラーメン屋の前に、短い行列が出来ていた。あつあつのラーメンにはまだ早いと思うのだけど、昨日から、がくんと気温が下がったから、みんな急に暖かいものが恋しくなったのかもしれない。
あたしみたいな、ロマンチックという言葉が豚に真珠のネックレスをかけるぐらい似合わない女でも、夏が終わるのは寂しいと思う。特に、今年は。夏だけじゃなく、あたしの若い時代まで一緒に終わっていくようで。若い時代が終わるって、23歳になっただけなんだけど。
普通の社会だったら23歳なんて、まだまだ若い。十分子ども扱いされて、一人前と認めてもらえない時期だと思う。けど裏の世界では、特にロリ度の高いうちの店では、おばあさんも同然の年齢だ。
「ねぇ、どこのお店?」
工事現場の横を通り過ぎようとすると、カラーコーンの隣にウンコ座りしてタバコを吸っている男の子に声をかけられた。全部で4人。みんな、耳や鼻にいくつもピアスをくっつけたり、髪の毛をキラキラの金髪に染めてライオンみたいに逆立てたりしている。
この辺りを1人で歩いてる女は、100%風俗嬢だ。彼らはそうとわかって声をかけてくる。
あたしはそうとわかって無視する。
まもなく、斜め後ろで不満そうな声がした。
「なんだよ、教えろよ」
「あれはやめとけって。オバサンじゃん」
聞き捨てならない一言に振り返った。もう若くない、若くないと十分言い聞かせたつもりで、あたしはまだ若い女のつもりでいた。
睨みつけた視線の先で、タバコを握った男が笑い転げる。
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