Kiyomi〜風俗嬢の恋 vol.4〜<第17話>
<第17話>
これからのこと。店を辞めさせられて無職になって、あたしはどうするのか。
これからどうやって生きていくのか。身体を売ること以外何も出来ない、この世界で生きていく術をひとつも身につけてこなかった、あたしが。
「わかんない……」
「わかんないじゃ困るだろ。清美の人生なのに」
「……」
「真剣に考えるんだ、清美はまだ若い。やけにならないで、ちゃんと自分の人生と向き合え」
「じゃああたしを富樫さんの奥さんにして」
プロポーズというにはあまりにもひどい、甘い囁きどころか、どっちかっていうと脅迫に近いトーンになった。言いながら富樫さんを睨みつけると、切れ長の目がぎょっと丸まる。
「それはつまり、結婚に逃げるってことか」
「そうじゃな……、ううん、そうかもしれない。でもあたし、ちゃんといい奥さんになるよ。約束する。富樫さんのこと大好きだもん、富樫さんのためなら何でも出来る。料理も掃除も洗濯も」
「……何だ、それは」
「そんな反応しなくたっていいじゃん。あたしたち何年付き合ってると思ってんの、年齢的にも全然結婚したっていい歳だし、お互い」
「他に相手がいるんだ」
言いながら、富樫さんがくるんと背を向けた。クールなこの人もさすがに、あたしの顔を見ることに耐えられなかったのかもしれない。
手を伸ばせばすぐ届くところにある細長い背中が遠く、あたしと富樫さんを隔てる壁になっていた。
もうどうにもならないことを知らされ、胸が割れる。喉が冷えて狭くなって、唇の間から、えっ、とため息のような悲鳴がこぼれた。
「清美の他に、付き合っている人がいる。結婚は、その子とする。近いうちに話すつもりだったんだ」
「そんな……。なんで」
「彼女、妊娠してる」
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