Kiyomi〜風俗嬢の恋 vol.4〜<第17話>

2014-02-04 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,129 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Kiyomi 連載小説 風俗嬢の恋


 

リング

<第17話>

 

これからのこと。店を辞めさせられて無職になって、あたしはどうするのか。

 

これからどうやって生きていくのか。身体を売ること以外何も出来ない、この世界で生きていく術をひとつも身につけてこなかった、あたしが。

 

「わかんない……」

「わかんないじゃ困るだろ。清美の人生なのに」

「……」

「真剣に考えるんだ、清美はまだ若い。やけにならないで、ちゃんと自分の人生と向き合え」

「じゃああたしを富樫さんの奥さんにして」

 

プロポーズというにはあまりにもひどい、甘い囁きどころか、どっちかっていうと脅迫に近いトーンになった。言いながら富樫さんを睨みつけると、切れ長の目がぎょっと丸まる。

 

「それはつまり、結婚に逃げるってことか」

「そうじゃな……、ううん、そうかもしれない。でもあたし、ちゃんといい奥さんになるよ。約束する。富樫さんのこと大好きだもん、富樫さんのためなら何でも出来る。料理も掃除も洗濯も」

「……何だ、それは」

「そんな反応しなくたっていいじゃん。あたしたち何年付き合ってると思ってんの、年齢的にも全然結婚したっていい歳だし、お互い」

「他に相手がいるんだ」

 

言いながら、富樫さんがくるんと背を向けた。クールなこの人もさすがに、あたしの顔を見ることに耐えられなかったのかもしれない。

 

手を伸ばせばすぐ届くところにある細長い背中が遠く、あたしと富樫さんを隔てる壁になっていた。

 

もうどうにもならないことを知らされ、胸が割れる。喉が冷えて狭くなって、唇の間から、えっ、とため息のような悲鳴がこぼれた。

 

「清美の他に、付き合っている人がいる。結婚は、その子とする。近いうちに話すつもりだったんだ」

「そんな……。なんで」

「彼女、妊娠してる」

 

 

 




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