フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第13話>

2014-03-20 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,137 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Aimi フェイク・ラブ 連載小説


 

危険

 

<第13話>

 

再就職活動に絶望した聡は、面接にもハローワークにも行かず、引きこもってゲームばかりするようになった。起きてから寝るまでゲームゲームゲーム。そして、時々私との喧嘩。

 

それがドロップアウトして得た聡の生活だ。

 

再就職活動をしないことを責めると、聡はよく泣いた。

 

この頃まで聡が泣くのを見たことはなくて、それは私が生まれて初めて見た大人の男の人が流す涙で最初はびっくりしたのに、すぐに聡の涙は見慣れたものになってしまった。

 

不眠を訴えだした聡は、精神科に行き、うつ病と診断されるなり、さぁこれで免罪符を手に入れたと言わんばかりに、堂々と昼夜逆転のダラダラ生活を続けた。

 

うつは病気だから薬を飲めばすぐ治る、仕事のことは今は考えないでとにかく休息したほうがいい……そんな医者の言葉を鵜呑みにしてしまうんだから。

 

うつなんかになってごめん、藍美に迷惑かけてごめん、俺のうつのせいで……。

 

自分をしっかり擁護しながら謝る聡を何度捨てようと思っただろう。

 

そうこうしている間に、私も仕事を無くした。

 

もともとあまり大きな会社ではなく、傾きかけていることもわかっていたけれど、いよいよ危なくなった途端一番に、新人の私の首を切った。退職金なんて出ないし、もちろん次の仕事の口なんて紹介されない。

 

聡は、本当にごめん、俺がうつなんかじゃなかったら、なんて泣くばかりで、私は自分1人の力で聡と私とを支えていくことを余儀なくされた。

 

自分をアピールする能力に欠けていたのは私も同じだった。

 

そもそもこのご時世、名もない短大の保育科を出ただけの地方出身の女の子の就職先なんて、そうそうない。

 

まだ顔が可愛ければ良かったのかもしれないけれど、私には面接官のオヤジ相手に色目を使うことすらできなかった。

 

学歴もない資格もない可愛くない。ないないだらけで面接に落ち続け世界の終わりが来たような気分で街を歩いていたら、いわゆる高収入求人誌というやつを手渡されたのだ。

 

 

 




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