フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第16話>
<第16話>
別に李香のどこが嫌いというわけではないけれど、短大時代は毎日のように会っていた友だちの1人である李香が、その存在だけが、疎ましかった。
会社をクビになって、ヒモ化した聡を養うため風俗嬢になってしまった今の自分を、誰にも知られないたくなかった。
気が進まないままアドレスを交換すると、李香は先に立ち上がった。
「連絡するよ! 今度みんなも集めて飲み会開こうと思ってるんだ、同窓会とあたしの結婚報告を兼ねて!」
「おっ、いいねぇ」
「絶対来て! じゃあ頑張ってね、職探し」
元気いっぱい手を振る李香の膝の上で、スカートが翻る。さっきの女子高生たちのように、軽やかに。
容姿は私とどっこいどっこいで、太っていたことがコンプレックスで、短大時代は「彼氏イナイ歴年齢とイコールだよ、どうしよう」って毎日のように言っていた李香。
そんな李香が、今は私とはまったく違う明るい人生を歩んでいる。
私が、短大の保育科を出ながら保育士にならなかったのは、実習で自信を無くしてしまったからだ。まったく自分の思い通りにならない子どもという生き物、好き勝手なクレームをつけてくるモンスターペアレント……。
現実の厳しさは、周りから聞いて知ってたつもりだけど、いざ目の前のこととなると、あっという間にうちひしがれた。
私は、それぐらい弱い人間だ。
もし、保育士になってたら、今みたいなことにはなってなかった……?
そう単純なものではもちろんないだろうけれど、李香のせいで考えてしまう。
あの時、ああしていたら、こうしていたら、あの道を選んでいたら……。
“if”の向こうの世界は絶対的に遠い。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。