フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第18話>

2014-03-25 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,007 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Aimi フェイク・ラブ 連載小説


 

JESSIE

 

 <第18話>

 

『最近また徘徊するようになっちゃってさぁ、困ってるのよ。この前なんて、半日も迷子になるから、市内放送で探してもらって……。ご近所に知られちゃって恥ずかしかったわ。いくら人命には変えられないって言ってもねぇ……』

 

お母さんが介護している父方のおばあちゃんの話だ。

 

私が小学生ぐらいの頃は、日ごとお母さんと嫁姑バトルを繰り広げ、気が強くて元気いっぱいだったおばあちゃんは、今は瞳に光を失った痩せこけた老人。認知症を煩って、もう、かなり経つ。

 

最近では時間の感覚も、自分が何歳なのかも、わからなくなってきて、今年のお正月に帰った時は私を見るなりしわがれ声で、「あなただあれ? おはじきして一緒に遊ぼう」なんて言いだすのだから、さすがにいたたまれない。

 

お母さんは一手に介護を引き受け、毎日かいがいしく、食事の世話だの、下の世話だのやっているけれど、いつか昔いじめられた恨みを、虐待という形で晴らしたりはしないかと、時々心配になる。

 

「誰かに手伝ってもらえないの? お父さんとか、あと延也とか」

『お父さんは全然駄目よ。あの人、未だにカップラーメンひとつ作れないんだから。それに延也は相変わらずだもん』

「相変わらずって、まだ悪いことしてるの?」

『こないだも学校に呼び出されたわよ、喧嘩したって。停学処分になっても、家の手伝いするどころか、フラフラ遊びにいくんだから……』

 

まったく、私がいなくなって、うちに子どもは延也1人なのに……。

 

いや、もう高校2年生なんだから、子どもじゃないっていうのに、何をやっているんだろう。喧嘩だ、万引きだと、延也は高校に入った頃から生活が急に荒れだして、お母さんは心配はするけれど、なすすべもない。我が弟ながら腹が立つ。

 

いや、私にそんなことを言う権利はないんだ。家族から逃げているのはむしろ私だもの。

 

 

 




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