フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第18話>
<第18話>
『最近また徘徊するようになっちゃってさぁ、困ってるのよ。この前なんて、半日も迷子になるから、市内放送で探してもらって……。ご近所に知られちゃって恥ずかしかったわ。いくら人命には変えられないって言ってもねぇ……』
お母さんが介護している父方のおばあちゃんの話だ。
私が小学生ぐらいの頃は、日ごとお母さんと嫁姑バトルを繰り広げ、気が強くて元気いっぱいだったおばあちゃんは、今は瞳に光を失った痩せこけた老人。認知症を煩って、もう、かなり経つ。
最近では時間の感覚も、自分が何歳なのかも、わからなくなってきて、今年のお正月に帰った時は私を見るなりしわがれ声で、「あなただあれ? おはじきして一緒に遊ぼう」なんて言いだすのだから、さすがにいたたまれない。
お母さんは一手に介護を引き受け、毎日かいがいしく、食事の世話だの、下の世話だのやっているけれど、いつか昔いじめられた恨みを、虐待という形で晴らしたりはしないかと、時々心配になる。
「誰かに手伝ってもらえないの? お父さんとか、あと延也とか」
『お父さんは全然駄目よ。あの人、未だにカップラーメンひとつ作れないんだから。それに延也は相変わらずだもん』
「相変わらずって、まだ悪いことしてるの?」
『こないだも学校に呼び出されたわよ、喧嘩したって。停学処分になっても、家の手伝いするどころか、フラフラ遊びにいくんだから……』
まったく、私がいなくなって、うちに子どもは延也1人なのに……。
いや、もう高校2年生なんだから、子どもじゃないっていうのに、何をやっているんだろう。喧嘩だ、万引きだと、延也は高校に入った頃から生活が急に荒れだして、お母さんは心配はするけれど、なすすべもない。我が弟ながら腹が立つ。
いや、私にそんなことを言う権利はないんだ。家族から逃げているのはむしろ私だもの。
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