フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第22話>
<第22話>
「えっ? 君、アナル駄目なの?」
強い口調に怯んで小さく頷くと、バスローブ1枚でベッドに腰掛けている客は、あからさまに不愉快な顔をした。
目鼻立ちのはっきりした濃い顔立ちは、昼間の太陽の下で見たら格好いいんだろうけれど、ベッドの上で私を待ち構えていた数々の恐ろしい道具たちと相まって、鬼とか閻魔様にしか見えない。
「ごめんなさい……」
「マジかよ、電話の人にちゃんと確認したんだけどなぁ」
「その、どうしても……、しないと、ダメですか? 私、自分のは無理だけれど、お客様のお尻を舐めるプレイならできます」
「いや、それじゃダメなの。俺は女の子のお尻攻めるのが好きなんだもん。参ったなぁ。チェンジってのも嫌だよねー、君?」
ここでチェンジされたら、今夜はお茶を引くことになるかもしれない。
ベッドの上でぎらぎら光っている、真っ赤なアナル用のバイブと、客のしかめっ面を何度か見比べた。
「じゃあ……。今回だけ特別に……」
私は最悪な女だ。
セックスも客も大嫌いで、こんなところに来る男なんかみんな最低で、今すぐこの世のすべての睾丸がなくなってしまえばいいと思っているくせに、お金の前にいとも簡単にプライドを投げ打つ。
途端に、しかめっ面が笑顔になった。
「そうこなくっちゃ。大丈夫、最初はみんな初めてなんだよ。すぐ気持ち良くなる」
ニヤリとはみ出した八重歯が不吉に光って、私は愛想笑いを返しながら早くも後悔していて寒気が背筋を震わす。
さすが、自分で道具を揃えるくらいだから慣れているんだろう。手際はいいし、痛みは感じない。
とはいえ、まったく気持ち良くないし、本来排泄器官であるそこを外部からいじられる不快感と、四つん這いにさせられている恥ずかしさは、どうしようもなかった。
「ほら、もう2本入っちゃったよ、指。るいちゃん、本当に初めてなの? お尻ユルユルじゃん」
「そ、そんなこと……、ない」
「本当は感じてるくせに。よし、もっとすごいの入れてあげる」
「えっ、ちょっ、やめ……っ、わあぁ」
不快感から出た声を感じている声だと、客は勘違いしたのか、嬉しそうにアナルバイブの出力を上げる。
気持ち良い時でも、嫌で嫌でたまらない時でも、裸にされた時女が上げる声は大して変わらない。
いや、それだけじゃない。私はすっかり風俗嬢だった。
風俗嬢なんてやりたくないやりたくない、こんな仕事早くやめたいと思ってるくせに、いつのまにか風俗嬢になっていった。
嫌でも、苦しくても、客に嫌われたくない、感じてるように振る舞わなければ、全身で嘘をつかなければと、心より先に体が媚びを売る。
四つん這いの体勢で、客に見られていないのをいいことに、シーツを握りながら少しだけ涙をこぼした。
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