フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第25話>

2014-04-01 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,080 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : フェイク・ラブ 連載小説


 

JESSIE

 

<第25話>

 

帰ったら、聡に笑顔でただいまを言おう。

 

どうせ聡は、またゲーム漬けで一晩過ごしたんだろうけれど、とにかく笑顔で帰ろう。

 

起こってしまった嫌なことにこだわっても、何もならない、切り替えなきゃ。

 

そう決意してアパートの階段を登ったのに……。

 

「就職活動? だいじょぶ、だいじょぶ」

 

ゲームの仲間との会話に夢中な聡は、玄関のドアを開け閉めした音に気づきもしない。私は、やれやれと肩をすくめながらパンプスを脱いでいると、

 

「彼女が風俗やって食わせてくれるからさ。稼ぎがいいから、俺が慌てて働く必要ないんだよねー」

 

そんな声が聞こえてきて、文字通りはじかれたように顔を上げた。

 

ハッハッハッと、とてもうつを患ってる人のものとは思えないカラリとした笑い声。

 

「ハッハッハッ、そうなんだよなー、最低なんだよなー、俺。よく自分でわかってるよ……。うん、そりゃ嫌じゃないかっつったら、嫌だよな。自分の彼女が、他の男にキスされて、おっぱい触られて、しゃぶらされて、ヤラれてんだぜ? でも、金がないんだからしょーがねーじゃん? ……アハハ、そうなんだよ、ほんと最低なんだよ、俺」

 

自分のことを最低、最低と冗談のように繰り返す聡。その言葉には、反省も躊躇いも、まったく含まれていない。

 

私はこんな男のためにたった3000円でアソコを開き、お尻をいじくられ、ブスだの風俗嬢のくせにだのとボロクソ言われ、言い返すこともできないほど、日々プライドを踏みにじられて過ごしてきたんだ。

 

わざと音を立ててリビングに続くドアを開けると、振り向いた聡の笑顔が固まる。

 

情けなくぽかんと空けた口の中は、真っ黒でからっぽで、それがそのままこの男の中身だった。

 

 

 




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