フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第25話>
<第25話>
帰ったら、聡に笑顔でただいまを言おう。
どうせ聡は、またゲーム漬けで一晩過ごしたんだろうけれど、とにかく笑顔で帰ろう。
起こってしまった嫌なことにこだわっても、何もならない、切り替えなきゃ。
そう決意してアパートの階段を登ったのに……。
「就職活動? だいじょぶ、だいじょぶ」
ゲームの仲間との会話に夢中な聡は、玄関のドアを開け閉めした音に気づきもしない。私は、やれやれと肩をすくめながらパンプスを脱いでいると、
「彼女が風俗やって食わせてくれるからさ。稼ぎがいいから、俺が慌てて働く必要ないんだよねー」
そんな声が聞こえてきて、文字通りはじかれたように顔を上げた。
ハッハッハッと、とてもうつを患ってる人のものとは思えないカラリとした笑い声。
「ハッハッハッ、そうなんだよなー、最低なんだよなー、俺。よく自分でわかってるよ……。うん、そりゃ嫌じゃないかっつったら、嫌だよな。自分の彼女が、他の男にキスされて、おっぱい触られて、しゃぶらされて、ヤラれてんだぜ? でも、金がないんだからしょーがねーじゃん? ……アハハ、そうなんだよ、ほんと最低なんだよ、俺」
自分のことを最低、最低と冗談のように繰り返す聡。その言葉には、反省も躊躇いも、まったく含まれていない。
私はこんな男のためにたった3000円でアソコを開き、お尻をいじくられ、ブスだの風俗嬢のくせにだのとボロクソ言われ、言い返すこともできないほど、日々プライドを踏みにじられて過ごしてきたんだ。
わざと音を立ててリビングに続くドアを開けると、振り向いた聡の笑顔が固まる。
情けなくぽかんと空けた口の中は、真っ黒でからっぽで、それがそのままこの男の中身だった。
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