フェイク・ラブ 〜Aimi〜<第27話>
<第27話>
「だいたい、いったいさっきの何よ、稼ぎがいいって!? 聡、私の話聞いてた!? 何度も言ったでしょ、この家とこの生活維持していくの、大変だって……。売れるものみんな売って、必死でお金作ったじゃん!!」
「いや、だからそれは、藍美がムダ使いしてんだろーなーって思ってたから。風俗嬢って、エステ行ったり、ブランドものとか高い化粧品買ったり、すげー金使うんだろ? 藍美もそうなっちゃったのかなって」
「そんなこと全然してない!! ただ、稼ぎが少ないだけなの!! 出勤しても1人も客がつかない日もあるし、そういう日はお給料が0円で帰るんだから、むしろ交通費分マイナス!!」
マジかよ、と聡はまたぽつんと言った。
狂いそうなほどのやりきれなさで、次の言葉を失っている私に向かって、きょとんと顔を上げる。
元はそこそこ整っていたのに、乱れた生活のせいで顔色はくすみ、隈ができ、無精ひげが伸びて、ニキビがいろんなところに出来ていた。
私が必死でやってきたことの結果が、これだけ醜くなった聡なんだと思った。
「ごめん、藍美。今まで本当にごめん。俺どうすればいい?」
「どうもしなくていいよ……、今すぐこの家、出てって」
ついに言ってしまった。
自分が発したとは思えないほど、ぞっとするようなひんやりする声だった。
仕事して、朝帰ってきて、ひと晩中ゲーム漬けだった聡の背中にむなしく響く“ただいま”を言う時や、仕事探しもせず、うつだのなんだのと言い訳して、1日中ゴロゴロしている聡の隣で家事をする時……。
何度も、何度も、舌先まで出かかった禁断の言葉を、ついに解き放ってしまった。
聡が恐ろしげに目を見開き、ものすごい力で私の腕を掴む。
「そんな、何言ってんだよ、藍美。それだけは勘弁してくれよ!」
「勘弁しないっ! 聡は私がいるからダメなの、私がいるから甘えるの、私がいるから聡はダメ人間になっちゃったの!! いっぺん一人ぼっちになって、本気でどん底まで落ちてみればいい、私も自分一人で暮らしていくだけだったら、風俗なんかしなくていいし」
負けない力で聡の腕を振り払う。
ダラダラした生活で筋肉が萎えていたのか、皮膚にうっすら赤い跡をつけて、聡の手はあっさり離れた。
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