フェイク・ラブ 第二章〜Nanako〜<第5話>

2014-04-14 20:00 配信 / 閲覧回数 : 1,072 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Nanako フェイク・ラブ 連載小説


 

JESSIE

 

<5回目>

 

「お姉さん、どこ行くのー?」

 

手をひらひらさせてナンパを振り切った。

 

ごめんこれからデリヘルで仕事するの、って言ったらあの男の子はどんな顔をしたんだろう、なんて思いながら。

 

女の部分を思う存分出し切って、それで評価される風俗の仕事は、あたしを一番あたしらしくしてくれる。

 

「好きでやってる」と言う風俗嬢はたくさんいるけれど、たいがいは「好きでやってるんだもん」って意地が垣間見えるし、自分で自分を無理やり納得させているだけ。

 

でも、あたしは、店も客もひたすらチヤホヤしてくれる風俗の仕事が心から好きだ。

 

最近、ある女性誌が「女子卒業宣言、もう女子とは呼ばないで! 大人の女になるために今すべきこと」なんて特集を組んで、それに拍手喝采の大反響が起こったらしいけれど、あたしに言わせれば女子卒業? はっ、バカじゃないの、って感じ。

 

あたしはいつまでも女子でいたいし、女子としてみんなにチヤホヤされていたい。それが一番の幸せで、咎められる理由はない。

 

あの雑誌のキャッチコピーに共感するのは、そもそも女子としてチヤホヤされたことがないブス(あの木崎みたいな)のやることだ。

 

ほんとはチヤホヤされたくてたまらなくて、でもブスだから無理、そういう女のフラストレーションは、あたしみたいな女をいじめたり、「女子卒業!!」って言葉に拍手喝采することぐらいでしか癒されない。

 

生まれてこのかた売春を悪事だと思ったことはないあたしだから、好きでない男と会っていきなりセックスするのに抵抗はないし、ほとんどのお客さんは優しく扱ってくれるので接客で嫌な思いをすることもほぼない。

 

オプションだって、他の女の子は浣腸だの顔射だのゲロ塗りまでOKにしてる子もいるけれど、あたしはAFと即尺、アナル舐め、道具系もローターや細めのバイブなど軽いものだけOKにしている。

 

見た目を完璧に整え、接客中の気配りと機知に富んだ楽しい会話を心掛ければ、ハードなサービスをしなくてもお客さんはついてくる。ドリームガールには4年いるけれど、2年前からナンバーワンだ。

 

出勤頻度はだいたい週3、平日は会社帰りから24時まで、金曜日か土曜日の夜は21時から翌朝5時まで。

 

多い出勤ではないけれど、その稼ぎはOLの月給を遥かに上回り、ほとんどエステや化粧品に使っている。

 

それに、実は整形もしている。稼ぐためには必要なことだ。

 

自分で稼いだお金で自分を磨いているだけ、誰にも文句を言われる筋合いはない。

 

 

 

 




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