フェイク・ラブ 第二章〜Nanako〜<第13話>
<13回目>
「本日担当させていただくレナです、よろしくお願いいたします」
「あ、はい、よろしくお願いします」
車の中で冨永さんに教えられた名前はヒラノさん。
部屋の番号とお客さんの名前はセットで女の子に伝えられる。ヒラノ402、サイトウ401……。車のナンバーのようにただの記号でしかなかったモノクロの情報が、会った瞬間細かいところまで色が塗られる。
ピンクの唇と蜂蜜色の髪を持っているヒラノさんは、明らかに緊張していた。
「あ、これ、お金」
「60分AFあり、2万円ですね。たしかにいただきました」
見ちゃいけないものだと思っているのか、笑いかけたって、こっちの顔を見ようとしないし、ものすごく戸惑ってるのが伝わってくる。
極め付けにこんなことを言いだした。
「あ、あの、俺。どうしたらいいでしょうか」
つい口が笑いの形になる。
やばい。可愛い。
見ず知らずの男と会って、早々キスしたり、セックスしたりすることが、痛くもかゆくもないあたしだけど、やっぱり生理的に無理って人とのプレイは辛い。
見た目とか、口臭とか、デブとか、脂ぎってるとか、触り方がねっちり嫌らしいとか……。
もちろんプロである以上、お客さんによってプレイの質を変えるなんてことはないのだけれど、やっぱり若くて可愛い男の子とのプレイは楽しい。
「一緒にシャワーを浴びましょう。服、脱いでください。あたしも脱ぐので」
「あ、はい……。いっ、いや、いいです、自分で脱ぎます」
ワイシャツのボタンを外そうとするとヒラノさんは、真っ赤になって背中を向けた。笑っちゃいけないんだろうけれど、どうしても笑いがこみ上げてしまう。
レンタルルームの割には広いシャワールームで、大人2人が入っても余裕がある。
スポンジでボディソープを泡立て、ありとあらゆるところにこすりつけられながら、ヒラノさんはされるがままだ。
この段階でもう我慢できないと、キスしたり、抱きついたり、触ってくる人がほとんどなのに、何もしない。ただただ緊張して固くなって、両手を所在なく体の横にぶら下げている。
でもそこはしっかり張り詰めて若々しく上を向いているのが愛らしい。いちご味のアイスキャンディーみたいなきれいな色だ。
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