フェイク・ラブ 第二章〜Nanako〜<第25話>
<25回目>
「俺もさ、そろそろ奈々子の親に合わせてよ。輸入雑貨の会社の社長だっけ? 家の中とか、センスいいんだろうな」
「そんなことないよ、普通の家だって」
「ねぇいつならいい? 今度の正月は? 奈々子、正月は実家に帰るだろ?」
「ごめん、今年の正月は帰らないの。友だちと韓国行くことになってて。ごめんね」
そっか、と快晴の薄い唇が拗ねたように尖る。
口調は軽いけど、顔にはしっかり感情が刻まれていた。
そんな快晴を見ながら、さぁ、これで今年の年末は別に行きたくもない韓国に行くことになっちゃったんだ、新大久保でお土産でも用意してこないとなんて、嘘をつく算段を考える。
「来年じゅうには式挙げたいよな。新居のことも考えないと、引っ越しあるし」
「そうだね」
快晴にはまだ親の離婚のことを話していない。
亭主関白だけど家族思いの優しいお父さんと彼を支えるお母さん、一家に花を添える美人のお姉さん、そして会社の跡取りである快晴。
一点の曇りもない理想的なエリートの家庭で育ったこの人は、愛人とか離婚とかアル中とか、ワイドショーのネタがてんこ盛りの現実を生きてきた、そんなあたしの真実を知った時どう思うのか。
そもそもドリームガールで働いてること自体当然内緒にしているわけで、それがこの先ずっとバレないという保障はどこにもない。
不安だらけの結婚話だ。
社長息子を相手にしたことは、将来安泰という四文字で、付き合い始めのあたしを舞い上がらせたけれど、いざ快晴との結婚が現実味を増してくるにつれて、嫌な想像ばかりが募る。
もし、あれがバレたら? これがバレたら……? その時快晴はどんな顔をするんだろうか?
あたしは、快晴に自分を取り巻く環境も、自分の歩いてきた道も、自分のやっている仕事も秘密にしていて、それは自分そのものをまったく見せていないのと同じだ。
これから先、ずっと一緒に生きていく人なのに……。
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