フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第8話>
<第8回目>
彩菜がわたしの耳に口を寄せてくる。
絶対に誰にも秘密、そう念を押されたところで黙っていられないのが女子高生という人生で、一番おしゃべりな時期の生き物だけど、彩菜はわたしが長谷部くんを好きなことを絶対に他に漏らさない
口が固くて信頼できる彩菜だからこそ、親友になれたんだろう。
「もう2年以上? 片思いしてるの」
「うん……、そうだね。1年の文化祭からだから」
「まったく一途で、健気だよねー。あたしなんて片思いなんかムダって思うタイプだから、向こうに気がないってわかったらすぐ他探しちゃうもん」
「ほんとはそのほうがいいのかもね」
長谷部くんとは高1の時に同じクラスだった。
サッカー部のエースストライカーで、いかにも女の子に好かれそうなルックス、大きな声でよくしゃべりよく笑うクラスの中心人物。
最初はわたしには関係のない人だって思ってた。ちっとも可愛くなくて地味で、クラスでもいるかいないかわからないような女の子のわたしには、長谷部くんは眩し過ぎた。好きになったところで絶対釣り合わないって、好きになる前からわかってた。
一生関係ない人のはずの長谷部くんと急接近したのは文化祭の時。1年のクラスの出し物はオーソドックスにお化け屋敷で、教室じゅうに暗幕を張り、段ボールの壁で迷路を作って、天井からこんにゃくをぶら下げたり、床にマネキンの生首を転がしたりした。
問題は誰がおどかし役をやるかで、いくら2時間ごとの交代制とはいえ、あちこち見て回りたい文化祭当日に自由が制限されてしまう。わたしはじゃんけんで負け、長谷部くんはなぜか自ら志願しておどかし役になった。
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