フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第20話>
<第20回目>
〜10年前〜
まる2年の片思いの間、時折話すだけの関係で、まったく進展のない代わりに頭の中でありとあらゆることを妄想していた。イタい行為だとわかってて、でも、止められなかった。
もし、長谷部くんとデートしたら? 長谷部くんとファーストキスを果たしたら? 長谷部くんの家に行ったら……?
それから先は経験がないし、そもそもまだ性欲というものもよくわからないから、妄想のしようがなかった。
けれども、それでもいつかそういうことが自分に起こるとしたら、相手は絶対に長谷部くんがいい、長谷部くん以外考えられないと思っていた。
「お邪魔します」
わたしと江口くんだけ、他には誰もいない家の中に向かって靴を脱ぎながら言うと、江口くんはおどけた調子でお邪魔されます、と返した。
2人とも顔を笑いの形にしているけど、どこかこわばった表情。わたしと同じように江口くんも緊張しているんだろう。
相手は長谷部くんじゃないとはいえ、初めて訪れた彼氏の家だ、シチュエーションにドキドキしてしまう。
ごくストレートに、いやらしい素振りなんてちっとも見せず、『俺んちで一緒に勉強しない?』って言うから二つ返事でいいよと言ってしまった。
江口くんがごく真面目な人だっていうのはよくわかってたし、たとえ下心があったとしてもいいと思っていた。
この前、彩菜に言われたことがいつまでもわだかまっている。
『いい加減長谷部くんのこと吹っ切らなきゃ』――……。
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