フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第24話>
<24回目>
「ご、ごめん」
江口くんはまた必死に謝りだす。わたしは下を向いて、おしゃれのために一番上のボタンをわざと開けていたブラウスの胸元を慌ててかき合わせながら首を振る。
「ううん、ごめん、こっちこそ」
「いや今のは俺が悪いよ。また調子乗った。そりゃ女の子は嫌だよな、最初は。焦り過ぎたな俺」
罪悪感が芽生えていく。江口くんがほんとはわたしをあんまり好きじゃないっていうのがただの被害妄想で、江口くんがちゃんとわたしを好きで告白してきてくれたとしたら、わたしは今拒んだことで江口くんをひどく傷つけたはずだ。
告白されてOKした時点で、わたしは江口くんにされることをすべて受け入れる義務があるんだと思った。
「大丈夫だよ、嫌とかじゃないから。ただ、いきなりで……びっくりしただけ」
本心だった。いつかそういうことをするなら長谷部くんが絶対いい、そう心に決めていたのに、いざ江口くんに触れられても不思議と嫌悪感はなかった。それだけ、高三にもなって処女でいることを焦っていたのかもしれない。
江口くんが真剣な顔で目だけ期待に浮かれさせて、わたしの顔を覗きこむ。
「もう一度、抱きしめてもいい?」
「うん……いいよ」
その後は勉強はしないで、江口くんとずっと触れ合っていた。江口くんはもう胸には触ってこなかったけれど、その代わり太ももの内側のかなり際どいところまで撫でられたし、キスもたくさんした。溢れた唾液がブラウスの襟について染みになった。
抱き合えば抱き合うほど、最初に感じたシチュエーション自体への興奮は冷めていって、むなしさがじわじわ心を満たしていく。
男の子に抱きしめられたりキスをしたり、わたしがずっとこだわっていたことは呆気に取られるくらい簡単で、それでもやっぱり同じことなら相手は長谷部くんがよかったと、未練がましい思いが湧いてきた。
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