フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第31話>

2014-06-24 20:00 配信 / 閲覧回数 : 999 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : chiyuki フェイク・ラブ 連載小説


 

腐女子会

 

<31回目>

 

ありふれたただの片思い、好きになってくれない人を好きになっただけ。それだけのことがこんなにもわたしを不幸にしている。

 

わたしだって彩菜の言うように、ちゃんと初めてを大切にしたい。いくら江口くんとキスを重ねても体に触れられても、わたしの中から長谷部くんへの思いは消えていかない。捨てられない思いを長谷部くんに受け止めてほしい。一度だけだっていい。

 

それが叶わない以上、余計傷つくとわかってたって江口くんを受け入れるしかなかった。

 

「おおーっと、柿本さんに菅原さんじゃーん」

 

ドーナツのトレイを抱えた男の子が4人も、後ろからいきなりわらわらやってきて、わたしも彩菜も少し慌てた。今の会話、どこから聞かれてた?

 

みんな同じクラスの見知った顔で、グループ同士休み時間につるむこともある仲。右から二番目に江口くんがいて、わたしを見てこっそり目配せする。恋人同士の合図はすぐに気づかれて、友だちにニヤニヤ肩をつつかれていた。

 

「ねぇ、2人でお茶―? 俺らも一緒していーい?」

 

4人のリーダー格の男の子が言う。いーい? って意思を問うよりは、むしろ強制的な言い方。ええっと、と戸惑うしかないわたしに代わって彩菜が答える。

 

「2人じゃなくて4人。朋子と沙紀がいて、今下にドーナツ買いに行ってる」

 

「マジ? 沙紀ちゃんいるの? 俺沙紀ちゃんの隣座るー!」

 

そう言ったのは沙紀を好きだと公言してはばからない子で、たしか中山くんか中村くんか忘れたけど、そんな感じの名前。いつもこうしてあからさまにアタックしているので、彩菜も朋子も面白がりながら、半ば呆れながら応援している。

 

当の沙紀は「顔は好みだけど、軽すぎる」って微妙な反応。

 

2年以上もずっと片思いしてずっと伝えられないわたしは、単純にすごいなと思って見ている。この子ぐらい軽く、屈託なく、好きだって言える性格だったら片思いで悩むこともなかったのかもしれない。

 

 

 




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